連載

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「そういえば・・・これは高くなかったのか?」

はっとなって顔を上げれば、思いのほか男鹿と近くて驚いた。
そして合う視線。

「だからバイトしてたんだよ」

その言葉に心が苦しくなった。

「・・・すまぬ」
「いや、別に俺は・・・」

喜んでもらうために・・・
どんどん尻つぼみになっていく言葉に、顔が赤くなるのを感じた。

「で、ヒルダ」
「む?」

また視線が合った。
今度は、強い意志を宿した、瞳。
それに引き込まれそうになって顔を近づければ、いきなり目をふさがれて視界が暗くなった。

「おい・・・さすがにここでは」
「・・・?・・・・・!!?」

言われて、今の状況に気付いた。


「なっ・・・あ・・・」

抱きしめられて近い距離だってのに、さっき顔を近づけてしまったからさらに近い。
しかもここは小さな子供が多いキャラグッズショップ。
この時間帯は人が少ないとはいえ、さすがに人前はまずい。

「続きは家で、な」
「〜〜〜〜〜!!!」

どかされた手の先では、にやりと笑う男鹿の姿に、一層顔が熱くなるようだった。










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