文壱

□ぬらりひょんの孫 十
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ザッ。
首無は夕霧のいる場所につく。
まわりは血の海だった。
「白菊?」
『彼女ならもう喰べましたよ』
夕霧の言葉に何かの音がした。
ガラスにひびがはいったそのような音。
「嘘だ」
『嘘じゃありませんよ、ほぅらぁ』
信じようとしない首無に口の中を見せる。
奥には女の死体。
「ッ・・・・・・あ、ぁぁ、」
首無は数歩後退りして膝をつく。
全てに絶望した目。
その目が夕霧は好きだった。
『喰べちゃいましたよ、貴方の愛しい人を』
首無はもうまともに息が出来ていなかった。
ヒューヒューと音がする。
『美味しかったですよぅ、あの女の肉はごちそうさま・・・・・・これあげますね、いらないから』
ペッと吐き出したのは白菊の着物の一部と生前首無が白菊に贈ったかんざし。
何かが、何処かが壊れる音を聴いた。
もう何も考えられなかった。
頭の中を埋めつくすは嘆き。
その心に秘めるは強い憎しみ。
「・・・・・・・・・ない」
『なんですかぁ?』
首無はゆっくりと立ち上がり黒弦を取り出す。
「死ね」
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