はぐれ兎

□六匹
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「え…あ、の」


…やっぱりね。
壱花はどうやら人と話すのが苦手な訳ではなく、人見知りがあるらしい。
僕が初めて話した日と同じような状態になっている。


「ねえ、名前は?」

「…壱花、です」

「壱花ちゃんか、呼び捨てでもいい?」

「う、ん」

「ありがとう!私の事も心って呼んでね!」



心は嬉しそうに握手をすると、壱花を抱きしめた。
壱花は驚いたように、ビクリと肩を震わせる。



「…離しなよ、心」

「えーっ、こんなに可愛いのに!?」

「それは関係ないでしょ」


はあ、と溜め息を付くと心は渋々と言った様子で離れた。


「ねえ、壱花って風紀委員なの?」

「…うん」

「そっかあ!じゃあこれから宜しくね!」

「ちょっと。いつそんな事言ったの」

「さっきから言ってるじゃん!」
「言ってない」


壱花の手を取って、僕は応接室を出ようと開きっ放しの扉に向かった。


「ちょっと!私も行く!オアシスを奪わないでよ!」

「そこで大人しくしてて」

「ちょ、恭弥…!」

「…恭弥、心ちゃんは?」

「いいよ。無視して」



僕と心をキョロキョロと交互に見る壱花。

…取り敢えずこの場から離れないと。



雲雀は"じゃあね"と一言残し、応接室を去った。



 
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