はぐれ兎
□五匹
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「…頂、戴」
「どうぞご自由に」
壱花はぱああっと明るい表情に変わり、キャンディを手に取った。
そして口に含むと幸せそうに微笑む。
「美味しい?」
「は…じゃなく、て。うん」
「良かった」
僕は壱花と向き合うような形で座る。
暫く正面の壱花を見ていたら、不意に目が合って笑顔を向けられた。
"ありがとう"と、お礼を添えて。
「(……僕は、多分)」
自分の胸が妙に締め付けられる。
それは応接室から眺めていた頃も、今よりは薄いが感じた事のある感情。
そして笑顔を見る度、羞恥に溢れた表情をされる度に訪れる。
そして、今。
考えもしなかった答えが見つかった。
二文字
(僕は彼女が)(好きなのかもしれない)