はぐれ兎

□四匹
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「ありがとう、ございます」

「どうして断らなかったわけ?
君ならハッキリ言えると思ったんだけど」

「…だって、やりたくない人が無理矢理やるよりも、私がちゃんとやった方が綺麗になると思って…」

「はぁ。そんな事言ってたらキリがないよ。
元々掃除なんてやりたがる人居ないよ」

「雲雀さんも?」

「うん」


ガチャリと扉を開けると、ふわりと良い匂いがした。


「紅茶飲める?」

「あ…、はい」

「アールグレイしかないから、淹れておいたよ」

「ありがとうございます」



とてもふかふかしたソファに座って、机に置いてある紅茶を手に取る。
とても優しい香りがして、思わず口元が緩む。


「これ、雲雀さんが淹れてくれたんですか?」

「…そうだけど」

「とても良い香りがします」

「そう、良かった」


雲雀さんがほんの少しだけ口角を上げた。
こんな風にも笑うんだ、と新しい雲雀さんを知れてなんだか嬉しい。

私は紅茶を口に含んだ。
甘い香りが口一杯に広がる。


「雲雀さん」

「何」

「腕章付けてもいいですか?」

「…今更だね」

「何か聞かないと悪い気がして…」

「君はも風紀委員なんだから、付けてても別に可笑しくないよ」

「…フフッ、そうですよね」


口元に手を宛てて、微笑む彼女。

それを見た瞬間、胸がとても満たされた。
"もっと笑って欲しい"
そんな欲望にも似た感情が溢れる。


「ねえ、」

「はい?」

「壱花って呼んでもいい?」




君の名前
(そう言ったのは)(無意識だった)
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