はぐれ兎

□三匹
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「それより、雲雀さん。あの…いいんですか?」

「何を?」

「手配させるって…、お金なら私が出しますよ」

「ああそれなら心配しなくていい、草壁が貰って来てくれるから」

「くさ、かべ…さん?」

「うん、風紀委員ではそこそこ頼りになるかな」


雲雀さんは小皿に水を入れて、マカに差し出す。
…雲雀さん、凄く表情が優しい。
そんなに兎が好きだったなんて。

(だから見逃してくれたんだ…)


「ありがとうございます」

「いいよこの位」

「雲雀さんは、動物が好きなんですか?」

「どうしてそう思うの?」

「マカを見ている時、目がとても優しいんです」


ね、マカ。と同意を求めるように頭を撫でる。
マカは私を見上げるようにして目を細めた。


「…君は好きなのかい?」

「はい、とても。
…実は、マカは親に棄てられちゃったんです」

「棄てる?」

「前に川辺の草むらで野生の兎が居たんです。
それがとても不思議に思って見ていたら、マカは乳すら与えられていなくて。
他の兎よりも全然小さくて弱っていて、それで…」

「マカを拾った。そう?」

「はい」


小さい頃から親に可愛いがられていた私には、その気持ちなんて分からない。
ただ想像しただけで孤独でとても寂しくなって、無性に泣きたくなった。


「それなら君に拾われて良かったんじゃない?」

「そう、思いますか?」

「うん」

「そう、ですか。ありがとうございます」


雲雀さんは自分が正しいと思う事をする。
正しいと思う事を言う。
初めて話して一時間もしてないのに、何となくそれが分かった。

…暖かい人だな、って。



 
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