永遠約束

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「なあ、起きろって」

「…ん〜」

「王子腹減った、朝飯出してよ」

「あともう少し…」

「はいお休みタイムは終了ー!」


ばさっと布団を引っぺ返された。
うおぉぉ、寒い!



「ししっ、間抜け面」

「うざ」

「じょーだんだって、怒んなよ!」


そういった直後ニヤニヤと笑うベルから反省が伝わって来ないんですが。
て言うか勝手にテレビ付けやがったぞこいつ。



「今日は何?」

「取り敢えず味噌汁とご飯にしようかと」

「何、プロポーズかよ」

「は?」

「だってジャポーネでは"俺に味噌汁作ってくれ"とか言うんだろ?
味噌汁作るって事はプロポーズなんじゃ…」
「いつの時代だよ」


何でこんな奴が7ヶ国語を話せるのか分からない。
本当に人間って不思議だよね。


「時代に取り残されてるようだけど、今平成だから」

「意味わかんねー」

「だったらデタラメ言うな時代遅れが!」


ベルの頭を殴ってから、私はキッチンへと向かって行く。
…本当に、この状況に慣れつつある自分が怖い。



「…本当に漫画の人なのかな…」

こうして話してると、全然そんな感じはしないよね。
まあ確かに意味分からん発言とかあるけども。
と言うか平成知ってるのか。



「プロポーズ、かぁ」


私もいつか誰かにされるのかな。


……………駄目だ。想像出来ない。
一生独身ってのも活きでいいじゃないか。


私は人参を洗いながらぼーっとそんな事を考えていた。



「あれ、そう言えばベルってどうやって帰るんだろう」


やっぱり一番普通なのが来た時と同じ条件を満たしたらだよね?
どうやって来たんだろ…、イタリアに居たとか言ってたし。
まさかイタリアに行ったらとかそんな条件じゃないよね?


「いってぇぇぇ!!」


ぐさ、と包丁で指を豪快に切ってしまった。
あああどうしよう痛い!
ドクドクと血が流れる場所が脈を打つ。


「ちょ、何してんだよ」


私の悲痛な叫びを聞き付けてベルが部屋から飛び出して来た。
…あれ?気のせいかな、笑ってない?
今"ぷっ"とか言うのが聞こえたんですが。


「ししっ、切ったの?」

「悪いか」

「ばい菌繁殖しない内に洗えよ」


ぐっ、と手を掴まれて水道で洗い流される。
血が無くなって良く見える傷口は、思いの外深くて。
貧血を起こしそうになった。


「あ、ありがとう」

「どーいたしまして。そこの材料切りたかったわけ?」

「うん」

「王子がやってやるよ」


するとどこから出したのか、ベルの手には綺麗な細工をされたナイフが握られていた。
…マジシャンかよ。



「よっと」


何を思ったのか、ポーンと野菜を投げたベル。
そして何やらナイフを振り回すと、綺麗に切り揃えられた野菜がまな板に着地した。


「うわ、すごっ」

「だってオレ王子だもん」

「いや王子関係なくね?」


取り敢えず王子はともかく手間が凄く省けた。
あとは野菜を煮るだけ。
そしたらダシを取って野菜入れて完成。
我が家の味噌汁は皆さんと違うけど気にしない。



「早く作ってね、王子朝風呂はいるわ」

「着替えはどうすんの」

「お前持って来て」

「は…」


言い返そうかと思ったら既にベルはお風呂場へと行ってしまった。
…畜生、自分でその位持って行けよ!



「面倒くさっ…」



朝から晩まで
(どうして四六時中こんな奴と!)(早く帰れよ!)

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