永遠約束

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「なあ、オレって漫画のキャラなんだよな?」

「そうなるね」

「存在否定されたみたいで悔しいんだけど」

「…うん」


ベッドに横たわるベルと、布団に入る私。
ベルは表情こそ伺えないが、きっと苦痛な顔をしているんだろう。
…さっきまでの元気はどこ行ったんだ。


「でもベルはベルだし、いいんじゃない?
ファンも沢山居るだろうし?悔しいけど」

「うししっ、王子モッテモテー!
お前はオレのファンじゃないの?」

「当たり前じゃん、だってリボーン見てなかったし…!」

それに例え見てたとしても、こんな前髪の長い奴は無理。
理想的にはさっき見たバジル…?君がいい。
名前も美味しそうだし。


「へーえ、ファンならサービスしてやるのに」

「どんな?」

「王子の手の甲にキスする権利とか?」

「いや誰も忠誠なんて誓わないから!!」


何言い出すんだと思えば、何だそれ!
本当にテンション可笑しいんですが。


「ししっ、つまんねーの」

「何がだよ」

「こっちの世界で下僕が出来るのもいいじゃん?」

「疑問符付けんな、あとこっち見るな」


誰が下僕になるか!
普通に友達とか可愛い事言えないの!?


「別に、王子に友達なんて要らないし」

「いやいやさり気なく心読むな。
そして寂しい事言うな、ネガティブが移る」

「だってオレ王子だもん」

「なんでこのタイミング!?」


絶対こいつ、それを言えば大体の事が片付くとか勘違いしてるよ!
しかもそれ真面目に聞き飽きたし。


「あー…本当にオレって何だろ」


くるんと此方に背を向けて、窓を見るベル。
確かに自分がキャラクターとか、普通絶望するよね。

でもベルは他の誰でもないし、今こうして存在してんのは事実なんだから。
それを上手く伝えたい。


「ベル」

「ん?」

「大丈夫だよ」


何が大丈夫なんだろう、でも一番伝えたいのはこれ。
あーもう自分が分かんなくなってきた!
本当に誰かの悩み事とか聞くの駄目なんだって、友達も知ってるから相談して来ないし!


「…さんきゅ」

「へ?」

「何でもねーよ、おやすみー」


バサッと布団を被るベル。
その仕草が子供っぽくて妙に笑えた。


「お休み」


そう言って私は電気を消した。



不安と不器用
(もしも私がベルになれたなら)(不安を分かってあげられるのに)

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