はぐれ兎

□六匹
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壱花が風紀委員に入って、一週間が過ぎた。

壱花は雑用も書類の整理も、嫌な顔一つせず寧ろ楽しそうにこなす。
マカも少し大きくなったような気がした。


そしてマカよりも急速に確実に大きくなっていたのは、


「壱花っ、マカが立ってるよ!
スゴいの、ほら見て恭弥…!」


彼女への気持ち。
前よりもずっと、傍に居れば居る程大切で愛しく感じるようになった。


そして彼女も。


「どうしたの?早くおいでよ、…あ、戻っちゃった」


僕に心を開いてくれていると思う。
名前も自然と呼んでくれるようになったし、普通に会話してくれる。

…でも、人間と言う生き物は強欲だから。



「見ていればまた立つよ」

「うん、そうだね。次こそはちゃんと見ててね?」



もっと、それ以上に。と考えてしまう。

壱花を、自分のものにしたいと強く思うようになった。



「(…群れるのは好きじゃないのにね)」

「?恭弥、悩み事でもあるの?」

「…まあね」


君絡みだ、なんて。
口が裂けても言えないけれど。



「私に出来る事なら何でもするから、抱え込まないでね?」



不安そうに、心配そうに僕を見上げる壱花。
その仕草さえも愛しく思う僕は、もう病気としか言えない。


「恭や…


「恭っ弥ぁぁぁぁ!!!!」



バタンと勢い良く応接室の扉が開かれる。

そして僕の名前を呼びながら、抱きついて来たのは



「…どうして此処に居るんだい、心」

「恭弥に会いに!」

「君は緑中だろ、不法侵入になるよ」

「それがね、今日転校して来たの!
制服も明日届くよ。間に合わなかっただけ!

…あれ、可愛い子が居る…!」


トタタタ、と壱花に駆け寄る心。
その目はとても輝いていて、僕は思わず頭を抱えた。

…ああ、また始まった。


「あなた、凄く可愛いね!
私の名前は心!友達になろうよ!」



ナンパにも似た、友達勧誘。



 
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