はぐれ兎

□二匹
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「風紀委員に…?」

「うん。そしたらその兎、応接室に置いていいよ」

「ほ、本当ですか!?」


そう言って安堵からか微笑する彼女。
嬉しそうに兎に頬擦りをしている。

それを見ると何故か暖かい感情に満たされた。


「でも、私は雲雀さんみたいに強くもないし、頭もそんなに良くなくて…。
役になんて到底なれません」

「知ってるよ、君が弱い人間と言う事位」

「だったらどうして私なんかを」

「面白いから」

「わ、私のどこが面白いんですか?
クラスの子みたいに楽しい話なんて、何も出来ないのに」

「別に。僕は女子生徒の話なんて興味ないから。
寧ろ君みたいに静かにしてくれている方がいい」

「それなら面白くも何とも…」


そしてまた黙り込む彼女。
分からない。
それが表情に出ている。

…これだよ、面白いのは。


「君は感情が表情にそのまま出るね。
だから嘘も付かないし、思った事も言う。違うかい?」

「そんな事、ですか?」

「分かり易いって言うのはある意味一つの表現だよ。
自分の話をどう思ってるか、全部分かるからね、下手に気を使われるより楽でいいよ」


思ってもないのに同意して、分からないのに知っているふりをする。
群れている人間は皆そうだ。
話を合わせて少しでも自分を気に入って貰おうとする。

でも今目の前に居る彼女は違った。


「それで、入るの?」

「宜しくお願いします、雲雀さん」


ペコリと頭を下げてふわりと笑う彼女。
その表情はつい目を奪われる。
裏が無く、心の奥底から笑える人間なんてどれ程居るのだろうか。



「うん、宜しく。でも群れたりしたら許さないから」


君にまで、他の小動物のような色に染まって欲しくなかった。



無色の彼女
(何物にも染まらずに)(ただ無垢であり続ける)
 

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