以心伝心
□act.10
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「ちょっとぉ…!何すんのよ!」
「貴女はどうして此処に来たの?
みんなをおかしくする為なら許さないよ」
「あはっ、聞きたい?
私はね、異世界から来たのよぉ」
えへっと自慢げに笑う椎那に、耳を疑う。
異世界?そんなものある筈がない。
「それでねぇ、神様が来て椎那がお願いしたの!
大好きな世界に…此処の世界に送ってって!」
「何それ…」
「そこでただ行くだけじゃ嫌でしょ?
どうせならモッテモテになりたいから、逆ハー補正って言うのを付けて貰ったんだぁ」
「…逆ハー、補正?」
「そう!異性が無条件で私を好きになる便利機能なのよぉ!
みんなみーんな椎那の事を好きになるの!」
つじつまが合う。
最初にこの子が来て、ベルがおかしくなった。突如として態度が急変して、強制的な恋に陥っていた。
そしてその次はフランとマーモンが急変する。今私の隣に居るのは、椎那によって無理矢理に恋をさせられている二人。
絶対に許さない。許せない。
「ひっ……何、すん…」
「…答えて。どうやったら治るの」
椎那の喉元に銃口を突きつけた。これ以上黙ってられる程私もお人好しではないし、何より暗殺者だ。こんな少女を1人殺すなんて躊躇わないし容易い。
「知らないわよ…!ちょっと、何見てるのよ二人共ぉ!
こいつを早く止めなさいよぅ」
「ステラ、早く離さないと……ムムッ!」
「すみませんセンパーイ」
「フラン…!」
「もう演技するのにも疲れましたー。
事実が分かったのでもうフリをするのはいいですよねー」
「えん…ぎ?」
「あんたなんか好きになりませんよー。
ミーが好きなのは、ステラだけですからー」
そう言って私に優しく、愛しい人を見るような笑みを向けたフラン。とくん。初めて感じた胸の高鳴りは、苦しくて切ない気持ちにさせる。
「引き金、引いてくださいー」
フランに促されて、椎那へと視線を移す。カタカタと顔を青ざめさせてマーモンに助けを求め続ける、この後に及んでまだ仲間を利用しようと言うの?
私は目を瞑り、すがるように引き金を引いた。
銃声が響く。
(…これで、終わるんだ)
自分の手を汚す事でみんなの危機が消え失せるなら。
私は細く青白い煙を無心に眺めていた。
(私、正しいのかな)
無駄に一つ命を葬ってしまった気がした。
終焉へと
(椎那の体は)(鈍い光に包まれ消えた)