以心伝心

□act.5
1ページ/1ページ




「んまっ、どうしたのそのカオは!」


自分の部屋に入るに入れずに、しゃがみ込んでからどれ程経っただろうか。
もう顔は涙でぐちゃぐちゃになっている。

後悔に耽っていると、道行くルッスに声を掛けられた。



「ルッス〜〜〜!!」

「あらあら、どうやら訳有りみたいね。
私で良かったらお話聞くわよ?」


ポンポン、と頭を優しく撫でたルッスに思わず涙が溢れ出た。

本当、私にとってのお母さんだ。


「私、どうしたらいいか分からない」


私がとった行動は本当に正しいの?

優しくしてくれたフランを傷付ける結果で本当に良かったの?
私はルッスに思いの丈を全部ぶつけた。



「まずはその、椎那って言う侵入者おかしいわね。
…そうなの、ベルちゃんが」

「私はベルの事が好きだったのかもしれない」

「良く耐えたわね、強いわ」


いつもよりも優しい声に酷く安堵した。
ルッスはいつも、私の相談に嫌な顔一つ見せずに答えてくれる。
大好き、有難う、じゃ伝えきれない程感謝してる。


「兎に角私も行ってみるわ」

「駄目!ルッスまでおかしくなる!」

「大丈夫よ、私はボス一筋だもの!」


だから安心しなさい、と微笑うルッス。
あああもうまた泣きそう!

「それじゃあ一緒に行きましょ」

「…うん、」

「どうしたの?」

「フランとベルに酷い事言ったから、その…」

「会いたくない?」


ルッスの問いにコクリと頷くとペチリと両頬を軽く挟まれた。
何、どうしたの。


「いい?逃げてばかりじゃ何も解決しないのよ。
立ち向かって苦しんだ先に答えはあるの。
フランちゃんとベルちゃんとちゃんに言う事があるんじゃないかしら?」

「…うん」

「きちんと話せば許してくれるわ。
貴女には私が付いているの、オカマのパワーは千人力よ!」

パンッと手を叩いたルッスは、私の前を歩く。
そして振り返ると私に笑い掛ける。

"大丈夫よ"と、言葉を添えて。



「許して貰えるまで謝り倒す覚悟で行きなさい!」

「うっす!」

「いざとなったら泣くのよ!
涙は女の武器なの!」

「そーっすね!でもルッスのは凶器だってベルが言ってました!」

「んま!失礼なコね!」


クネクネして怒るルッスを見て思わず吹き出した。
そしたら笑ってた方が何倍も可愛いわ、とルッスに誉められて思わず赤面。

くそう、男なら惚れてたわ!


「一応は男よ」

「はっ、そうでした」

「うふ、でも男よりも強くて女よりも強い最強のオカマを目指すわ!」

「が、頑張って?」

「どうして疑問系なのよ!?」


キィー!と唸るルッスは私をバシバシと叩いた。
痛い、加減してるだろうけど痛い!

でもこんな風に接してくれる人が居る事がとても嬉しくて。
小さな声でお礼をもう一度言うと、ルッスは笑顔で返してくれた。




もう一度
(二人と一緒に)(笑いたいから)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ