私の愛した世界

□序章
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「…何か間違っていませんか?私は顔無しです。」

「そんな嘘…。通じると思っているのか?」

失笑するようにウサギさんが言う。

そもそも、嘘じゃないのに…。


「あのぉ…。」

傍で控えていたダルそうなメイドが声を発する。


「この人はぁ、ほんとぉに顔無しだと思いますよぉ?」

「なんだと…?!」

ブラッドから余裕が無くなっていく。


「だってぇ、さっきまでぇ、ボスも気付いてなかったのでぇ…。」


「…。」

「………。」

多分、この場にいる人の気持ちは一つだ。


(((((確かに!!)))))


私には、役持ちにしかない存在感はない。

先ほどまで、幹部ですら私の存在に気付かなかった。

それは、すなわち私が顔無しであることを意味する。


「…どういうことだ?」

流石、マフィアのボスとでも言うべきだろうか。

凄んでいる表情は恐ろしい。


「私…。」

そうなのだ。

昔からだった。

顔無しなのに、役持ちと頻繁に間違われる。

その原因は…。

「私、実は…!!」


「…まぁ、いいか。」

次の瞬間、ブラッドは大きくため息をついていた。

「考えるのもダルい…。」

「まぁ、そうだな。どうにかなるだろ。」

ウサギさんまで、つられている。

・・・私が心配するのもどうかと思うが、本当にこの組織は大丈夫だろうか。


こうして、何も解決しないまま時間は過ぎていくのだった。
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