私の愛した世界
□序章
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ズラリ…。
顔が見えない人が並ぶ。
1人ずつ自己紹介していく様子を帽子屋『ブラッド=デュプレ』は退屈そうに眺めている。
そんな中、私は少しドキドキしながら自分の順番を待っていた。
使用人の規定として被らなければならない帽子を深く被る。
万が一、落としたら殺されそうだし、帽子を落として死にたくはない。
いよいよ、次が私の番だ。
息を大きく吸い込む。
「アテネ=クロノスです!!
これからここで、働かせていただきます。」
よし、声量、内容、共に妥当だろう。
深くお辞儀をして…。
気付いた。
頭の上に帽子の感触が…ない。
ヤバい。
私の人生終わった!!
命の価値が薄いこの国とはいえど、別に進んで死にたいわけではない。
ということで、私は混乱していた。
「エリオット!!」
それまでは、微動たりともしなかったブラッドが突然立ち上がった。
殺される!!
そう覚悟した瞬間だった。
「どうしたんだ〜?ブラッド?」
…あれが…あれが幹部?
そこに立っているのは鮮やかなオレンジの髪をしたお兄さんだった…。
チャームポイントはウサギ耳…。
…むしろ、この組織に入る前に殺されてよかったかもしれない。
悪名で知れ渡っているブラッドのことだ。
どうせ、私のことも躊躇いなく殺すのだろう。
ところが、意に反して、聞こえてきたのは怒声だった。
「どういうことだ!!役持ちがいるなんて聞いてないぞ!!」
「へ…?」
ウサ耳お兄さんは呆然としている。
勿論、私も然りだ。
役持ち…。
私たちとは違って、極めて『存在』が強い人。
私は当然、役無しのカードだ。
ウサ耳のお兄さんがこちらを向いて、目を大きく見開いた。
「…どういうことだ?顔が…見える。」
「役持ち…。何が目的で忍び込んだ!!」
凄い剣幕で睨まれたが、当の私は戸惑うばかりだ。