StoryU

□Liar
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…俺は“嘘”を付く事が得意でね。

と、言うよりも、今までのこの俺の生きて来た世界では、

“嘘”の会話に“偽り”の微笑(え)み、

全てが“虚像”で塗り固められたそんな世界だったから。

唯、繰り返して行く日々の中で、

俺は一体幾つの“嘘”を付いたのだろうか。

否、寧ろ、この俺から“偽り”を奪ってしまったのなら、

一体何が残ると云うのだろう。

…きっと何も残らない。

だから俺は、絶対他人(ひと)には知られたくない、

決して見せない弱い部分を心を隠していたくて、

何度も重ねた、哀しい“嘘”を…

だけれどもしも、こんな俺にもこの歪んで汚れた世界にたった1つだけ、

幼い子供の頃からずっと変わらない“真実”が存在するとしたのなら。

もしもたった1人の“誰か”が変わらない俺の事を認めて知っていてくれたとしたのなら。

…そんな、夢物語の様な御伽噺でも有り得ない様な出来事が、

 まさかこの俺の身に降り掛かって来るとは、ね…

この世の中でたった1人だけ…俺の事を真っ暗な闇の世界から救ってくれた、リナと俺は今―

「ねっ、レオ、おいしいねっ!」

にこにこと屈託無く、心から嬉しそうにと笑うリナの小さな手にはアイスが握られていて。

「…」

俺はリナに返す言葉も無く、唯々じっと自分の手にも握られているアイスを見ていたり何かして、ね。

…いや、ちょっと待って、リナ…これは余りにも柄に無さ過ぎる…

こんなアイス片手にベンチに座ってデートだ何て…それは、6ヶ国の中でも如何にもな爽やか代表の、

ウィル王子にでも任せていた方が似合うと想うんだけど…ね、それでも…

「レオっ?どうしたの、アイス、おいしくない…?」

何処か気の強そうな意思の真っ直ぐな大きなリナの瞳はしゅんと哀し気に伏せられて、

口元をきゅっと結んで切な気な声を出されると、流石の俺も弱かったり何かして。

「…ん?あぁ、いや、美味しいよ」

気付けば俺の口から零れるは、又しても激しく俺の性には合わないこんな言葉で。

「そっか…良かった!」

初めて出逢った10年前と月日が経っても全く変わらない、笑うとくしゃっと崩れる笑顔で、

リナが嬉しそうにと微笑む、唯、それだけで。

俺の口からはふっと“偽り”何かでは決して無い、そんな心からの微笑(え)みが浮かぶ。

「レオ?」

リナの前でしか、普段は殆ど見せる事の無い俺の笑顔に、

不思議そうにきょとんと大きな澄んだ瞳を瞬かせる、そんなリナへと、

「口、付いてるよ?」

満面の笑みから、普段通りの“意地悪”を含んだ微笑みへと変わった事に全く気が付く事も無く、

ぱっと白く柔らかな頬を真っ赤に染めて、リナは、

「う、うそ…っ!右っ、左っ?レオ、どっち…?」

…何て事を言いながら、無意識に困った様に焦った様子で俺を上目に見て来たりして。

そんな、愛しい、可愛くって堪らない、この世界でたった1人だけのプリンセスへと俺は…

「…ウソ」

と、この言葉がリナの耳へと響くと同時に、重なる、2人の甘く優しい唇は…

「レ、オ…」

更に顔中真っ赤に染まるリナの様子は、瞳を閉じていても分かるから、ね。

もうこれからは、“嘘”を重ねて生きて行かなくても良いと想っていたけれど。

…だけどもそうだね、俺にはきっと生まれて“初めて”の、

 “優しいウソ”なら、悪くは無い…

**Sweet Pain**

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