StoryU
□カクテル
1ページ/1ページ
カクテル
*
…本当は、唯、甘いだけのカクテルは好きでは無い…
どうせ飲むなら、テキーラにウォッカをロックで、ね。
生憎、お酒に酔われて呑まれる性質(タチ)では無い物だからね、幾ら飲んでも酔ったりしないよ…だけどね、
…今夜は酔わせて、その甘い甘い、カクテルで…
今日だけは如何か、この俺の全てを全部忘れさせてくれるかな?
如何か今だけは溺れさせて、甘い香りに声にその痺れる様な甘い感覚に…
だけど、本当は心の奥では、俺は気付いて理解(わか)っているんだ。
…夜に逃げても、無駄に何度も身体を重ねても、心に空いた隙間はその穴は、
どんどん大きくなって行くだけだと云う事に…
身に着けた服が全て無くなってもそれでも、俺を雁字搦めに縛り続ける、
“ネルヴァン王国の王子”と云うその柵に囚われ続ける事しか出来ない事も、
理解(わか)っていても、それでもその事でさえも認めたく無くて、
今宵も俺は名前も素性も全く知らないそんな女をこの腕に抱く。
…ずっとこのまま一生、こんな空っぽな人生を繰り返すかと想っていたのだけれど、ね…
俺は幼い記憶に優しく残るあの瞬間の、2人交わした“約束”を想い出し、
そうして、“青い空のキレイさ”を教えてくれた、たった1人のその“存在”
…やっと、出逢えた、世界中でたった1人の俺だけの、“プリンセス”に…
今までは只、嫌な事全てを忘れるその為だけに、夢中で溺れた、本の一瞬の快楽に。
でも、今の俺は、もう違う…
心の底から“愛しい”と想う、“初めて”のその感情は、
キミの…リナと云うそのたった1人のその“存在”が、俺を救ってくれてそれから、
唯、この腕の中に包んで、柔らかなその髪や白くて直ぐに真っ赤に染まる頬に触れる其れだけで、
俺の心はこんなにも満たされて行って、優しくそして穏やかな、“安らぎ”に包まれる。
…俺にとってのリナは…そうだね、どんなカクテルよりも甘いそんな“存在”で…
ねぇ、リナ…キミのその甘くて可愛い、愛しくって堪らない、その“存在”で、俺を酔わして…?
リナと云う名の甘いカクテルに溺れて行けるのならば、俺にとっても本望だから…
もう、只、現実逃避をする為だけの、そんな夜は俺には要らない。
キミを…リナをこの腕の中に抱いた其の儘で眠りに着いて朝を迎える、そんなこの上無い“幸せ”を…
其れは俺にとっては当たり前何かでは全く無くって、丸で奇跡の様な出来事で。
…ねぇ、リナ…もっと、俺を酔わせて、そしてもっと、溺れさせて…
心を震わす、その“存在”、リナとの甘く穏やかな、夜は今日も更けて行く…
**Sweet Cocktail**