StoryU
□First Love
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First Love
*
…キミの、リナにとっての“初めて”は、俺にとっても“初めて”で、
今から少し、俺らしく無い事を云うけれど、微笑(わら)わないでいてくれるかな…?
そんな2人の“初めて”を、俺はこれから大切に、大事にして行きたいと、想うんだ…
『リナ…好きだよ、愛してる…』
…この俺がこんな言葉を伝える相手は、これから先の人生の中で、唯、1人だけ…
『約束…リナ、俺の世界でたった1人のプリンセスになってくれますか…?』
―“王子様からのプロポーズ”
さて、“お姫様”の、お返事は―?
「レオ…レオ…っ!」
俺の腕の中で、リナは華奢な身体を震わせ、顔をくしゃくしゃにして涙を流し、
言葉にならないその想いを一生懸命に伝え様とするかの様に、ぎゅぅっと強く、俺にしがみ着く。
「…リナの返事、聴かせて貰えるかな…?」
…本当は、リナの気持ちは、想いは、口に何て出さなくっても分かっていても、其れでも、
俺はリナのその声で、想いを伝えて欲しいんだ…
「レオ…っ、私、10年前の、ずっと、前から、レオの事…」
ひっくと、小さな声で泣きじゃくりながらも、それでもリナが紡ごうとしてくれる、其の想いは…
「私も…っ、大好き…っ、レオの事が、好き…」
…其れは俺が“初めて”貰う、優しい響きの甘くてそして柔らかく、心を震わす暖かい言葉…
「レオ…愛してる…」
リナの澄んだ真っ直ぐな瞳には、キレイなキレイな青空と、穏やかな表情の俺が映し出されていて…
その瞬間に、胸の奥から湧き起こる、溢れ出て来る、
“初めて”の、其の、“愛おしい”と云う感情に、
俺は、リナの華奢な身体を更に、強く、抱き締める…
「レオ…」
リナの瞳から溢れる暖かく優しい雫を胸に感じて、俺の気持ちに想いに応えてくれる様にと、リナも、
俺の背中に手を廻し、小さなその手で俺にぎゅうっと抱き付くその仕草にそして、
唯、リナと…“愛しい女性(ひと)”と触れ合うと云うその暖かな温もりで、
こんなにも、空っぽだった俺の心は一瞬で、其のリナの優しさに、包まれそして、満たされて行く。
…あぁ、幸せだなぁ…
リナの身体を抱き締め俺は、きっと生まれて“初めて”の、そんな感情を心の中で感じる。
何時も、そうだ…リナは幼いあの日のあの瞬間に、
其れから、青い空のキレイさを俺に教えてくれたあの瞬間にも、
何時だって、俺にとっては“初めて”の…失くしてしまっていた筈の、暖かな温もりを、俺に伝えてくれるんだ…
そうして、俺は、丸で大切な物を愛しむ様な、
そんな穏やかな瞳でリナを見つめて、其の白く柔らかな頬に優しくそっと触れる。
…何だか、リナと一緒に居ると、リナに触れると、安心出来る…
ずっと口には出さなくっても、憧れ焦がれ、求め続けた“安らぎ”を、
キミは…リナは、俺へと与えてくれるんだね…
“愛しい”想いを、“愛しているよ”を伝えたくって、俺は、そっと瞳を閉じて、リナへと顔を近付ける。
…だけど、何処か、何とも云えない違和感に気が付いて、俺は閉じた瞳を開いたその、瞬間、
涙で潤んだ大きな瞳を更に大きく見開くリナの其の表情(かお)が、俺の瞳の前に有って…
「え…っ、レオ…?あっ、え…っ?」
その一瞬で、瞬く間に顔中を真っ赤に染めるリナの様子に、俺は…
「リナ…キス…した事無いの…?」
何て事を、思わず其の儘、口に出してしまっていたりして。
“キス”と云う其の俺の口から出た余りにも直接的な言葉にリナは、今度は耳まで真っ赤に染めて、
「えっ、キ、な、無いよ…っ、だって…!」
…それから、キミの、リナの口から紡がれた言葉は…
「だって、ずっと、レオの事、本当に大好きだったから…」
…いや、ちょ…ちょっと待って…リナ、其れは本当に、可愛過ぎる…
リナにとっての…きっと女の子にとっては大切な色んな“初めて”を、
俺の…俺だけの為に、ずっと、取っていてくれたのかな…?
“可愛い”それから、“愛おしくって、堪らない”
そんな俺にとっても又も“初めて”の感情を、如何にかリナには悟られない様にと俺は必死で平常心を装い、
リナの耳元でと、こう囁く…
「…そう、それは、嬉しいね…」
…本当は、正直に云うと、その瞬間、リナの柔らかな頬に唇を寄せて、
リナの暖かな体温を直接感じていたかった…
だけど、余りに真っ赤になるそのリナの様子が俺へと移ってしまったのか、
俺の頬も何時の間にか、紅く染まっていたみたいでね、
リナは、そんな俺の頬を小さくそして、
10年前のあの瞬間と全く変わらない、柔らかくって、暖かな、その掌で優しく包んで…
「あ…っ、レオ、赤くなってる…可愛い…」
何て事をこの俺に、云って来たりして、ね。
…全く、赤く染まる顔の俺を見たり、それからこの俺に対して可愛いだ何て云ってくるのは、
後にも先にも、これから先の一生で、リナ、お前だけだぞ…?
リナ“だけ”、そんな甘い響きを心の中で心地良く想いながらも、
俺はつい、こんな意地悪な言葉をリナへと発してしまう。
「…うん?そんな事云う余裕何て、直ぐに無くしてあげるよ…?」
“好き”な女の子程、意地悪をしてしまいたくなる様な、俺の心の奥底の悪戯心にうっすらと灯が燈るも、
其れでも、今、リナを見つめる俺の瞳は優しく穏やかでいて、暖かい物な筈で…
「え…っ、レ、レオ…?」
リナのその意思の強い瞳は、恥ずかしそうに、揺らいで、そんな様子が、又、可愛くて…
俯きそして、きゅっと俺の服の袖を掴む仕草のそのリナに、
リナの柔らかな髪に触れ、ぽんと頭を撫でて、それから俺は、
「…大丈夫」
そう、フッと微笑み、相も変わらず、赤く染まった儘のリナの頬を優しく包んで、そして…
「…優しくするから…」
そう紡がれた俺の言葉にリナは、きゅっと大きな瞳を閉じて、俺達2人は、
“初めて”の、
優しく、優しく、蕩ける様に、甘い、そんな口付けを、交わすのだった…
―ねぇ、リナ…キミがずっと大切にしてくれていた、そんな“初めて”は、
俺にとっても、“生まれて初めて”心から大好きな相手と交わす物で、
実を云うとこの胸は張り裂けてしまいそうな程にドキドキと大きな音を立ててしまっていたそんな事に、
気付かれてしまっていたのかな…?
これから将来(さき)に訪れる、
俺とリナとの、2人のそんな“初めて”を、大事に大切に胸に抱えて、増やして行こう、ね―
**True Love**