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□その言葉は、言わないで
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その言葉は、言わないで
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…ソレは例えるとするならば、蜘蛛の糸…
張り巡らせたその糸で絡めて捕らえたのなら、只々罠に陥り溺れて行くだけ、
狙った獲物は、逃がさない…
「あら、ネルヴァン王国のレオナルド王子ですよね…初めまして」
…ん?あぁ、確か昨夜の…名前は何て云ったかな…
「これはこれは…これ程迄に綺麗な女性に私の事を知って頂けているとは光栄ですね」
何て偽りの会話を交わす、そんな中、肩に残るは真っ赤な“虚像の愛”のその印。
「…ん?あぁ、コレ…ね、普段余りこういうのは好まないけど、彼女とは色々と相性が良くってね」
“王子様”と云う仮面を脱ぎ捨て、話す相手は、
幼い頃からの顔馴染み、血縁関係の無い遠い親戚の、レイだ。
「まぁ、お陰で昨夜は全く寝ていなくてね…」
曲がりなりにも、コレでも一応、ネルヴァン王国の“王子様”のこの俺に、
「…バカレオっ、バカバカっ!」
…何て云うのは、レイ、お前だけだぞ?
そんなレイが、まさか、如何してあの場所に…
人気も僅かな明かりすらも無い、そんなバルコニーで、俺は熱いキスを交わす…
如何やら、“誰かに見られるかも知れない”、そんなスリルを好む女性は多いみたいでね。
誰1人居ない筈のその場所に、カツンと小さなヒール音が響く…
あぁ、如何やら誰かに見られてしまった様だね。
…でもまぁ、ソレはソレでまた…
「…余り良くない所を見られちゃったね…口封じは、コレで良いかな…?」
こう云えば、大抵の女は黙っていてくれる事を俺は今までの経験で知っていたりしてね。
「さっきのコト…ナイショにしてくれる…?」
そう低い声で甘く囁き、唇を近付けたその、瞬間…
流れる雲に隠されていた月が再び姿を現し、照らす月明かりが映し出したのは、
「…っ、レイ…!」
初めて見る、何時も可愛気の無い言葉ばかりを発するレイの、その泣き顔で。
そんなに潤んだキレイな瞳で、俺を見ないで…こんな俺何かの為に、キレイな涙は流さないで…
「バカレオ…っ、バカバカ…、最低っ、最悪…っ!」
何時も通りのその言葉の先に続いたのは、何処か理解(わか)っていた様で、でも少し意外な、
レイの口から聴きたくは無い、その“言葉”…
「…レオ…私、ずっと、レオの、コト…」
…ねぇ、レイ…どうか、その言葉の先は、この俺何かに云わないで…
そんなキレイな言葉は俺には勿体無いから…似合わないから、聴きたくないんだ。
こんな俺に伝えるよりも、もっと、レイにとっての大切な人へと伝えてあげてね…
…そう心の奥底で想いながら、俺は、レイの震える唇をそっと優しく人差し指を立てて塞ぐ…
「レオの…ばか…」
そう、俺は何時でも悪役でも悪者に成ったとしても構わない。
幼い頃から見てきたレイは…キミは、ちゃんと素敵な幸せな恋をして…ね?
そしてそれから何年か経ったある日に…
俺はレイが結婚式を挙げた事を人伝に聴いた。
…そう、良かった、レイは今もう出逢えたんだね、キミの事を本当に大事に想ってくれるそんな相手に…
俺はと云えば…そうだね、今の俺の、隣には…
**To Be Continued・・??**