Don't think, feel !

□17話
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大谷さんを交えての生活が始まって、やっと大谷さんがどんな人か分かりかけてきた…と思いたいけどやっぱりこの人よく分からない。異世界に飛ばされたのにやけに落ち着いてるし順応性は高すぎるし未だに外には出たがらないし。まぁ、外出しないのは仕方ないけど。

だから、今日は大谷さんを少し観察しようと思ってさっきから私は居間で課題をやるふりして大谷さんを凝視しています。そこ、暇人とか言わない。ちなみに竹中さんと石田さんは何か手伝いたいと言ってきたので洗濯を頼んだ。洗面所から「三成くんこのカラクリなかなか動かないね」「カラクリ風情が半兵衛さまの手を煩わせるなど、惨滅だアアア!!」とか聞こえるけど気にしない。私はあの二人を信じるよ。

気を取り直して大谷さんを見ると、私が暇潰しにでもなるかと思って渡した小説を読んでいる。文字が所々分からなくても楽しいらしい。


小説といえば…あの図書室から借りた白い小説どこいったっけ?やべ、どっかになくしたかも。………言わなきゃバレないよね。


大谷さんを観察と言ったが、大谷さん自身さっきから小説を読んでるだけなのであまり見ていても意味がない。でも課題をやる気もない私は窓の所にある風鈴の音を聞きながら床に寝そべった。風流だなぁ。

「もうわれを見るのはやめるのか?」

「……え」

寝そべったままソファーに座った大谷さんを下から見る。包帯に巻かれたその目はニヤリと歪め私をとらえた。

バレてた…?

「え、いや、バレ、へ?」

「落ち着きやれ」

いつもの引き笑いを見せる大谷さん。課題をカモフラージュにして見ていたから絶対バレてないと思ったのに…マジかよ。

「でも…よく考えれば戦国武将相手に盗み見なんて通用しないか普通」

「何か?」

「いや、何にも!」

これはきっと真面目に課題やれ馬鹿野郎という神様のお告げなんですね?そうなんですね?夏休みも中盤だというのにまったく課題に手をつけていない私への配慮なんだ。

課題のプリントを見れば古文の訳でピタリと止まっていた。比較的国語が得意な私だが、古文だけは苦手なのだ。昔の人の思惑など知ったことではない。大体なんで平安時代の人はよく和歌を送ったらその返事がこない鬱だ死のう。ってなるんだ?メンタル弱すぎだろ私を見習ってほしい。


答えが分からずうんうんと唸っていると包帯の手が視界に入った。大谷さんがいつの間にか私の隣へ来ていた。

「大谷さん、どうかしました?」

「鈴が困っていると思ってなぁ。何かわれに出来ることはないか?」

……優しい!!大谷さん優しい!!その気持ちで私はお腹いっぱいです!!なんてことは言わないけど課題が本当に嫌いな私にはその言葉が凄く嬉しかったので思わず大谷さんの手をとった。

「ありがとうございます!うわぁ大谷さんって優しいですね!」

「…」

「?大谷さん?」

なんだか大谷さんが私の手を見ながら固まっている。どうしたんだろう…。

あ、そういえば前も大谷さんは私と手を繋ぐのを拒んだんだった。忘れてた。




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