Working girl
□曲がり角でロマンス!?ないない(笑)
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各委員会の先輩から情報を聞き出したものの、情報という情報は得られなかった。ていうか、これだけ忍たまが居といて関わりのある人が善法寺先輩と小松田さんだけってどういうことだよ。はぁ…とは組一同は空き教室で再び輪になりながら脱力した。
「こうなったら、意地でも学園中探しまくって絶対見つけてやる!」
この現状に痺れを切らしたきり丸が立ち上がってそう言うと、やはり考えるより行動派なは組は賛同した。
ガラッ
突然教室に響いた音に十一人は一斉にビクッと肩を揺らした。ギギギ…と壊れた人形のように音のしたほうへ視線を向ける。
「失礼します」
教室の扉を開けたのは今日の話題の種、そして今丁度探しに行こうとしていた音無鈴だった。
まさかのご本人登場に場の空気は一気に張りつめた。鈴はといえば空き教室の掃除をしに来たが、予想以上の人が教室に居たので内心驚きつつも平然と部屋を見渡す。そして素早くお辞儀をした。
「失礼しました」
「ええぇ!?」
鈴の言葉には組が驚いている間に鈴はスタスタと最早競歩のように廊下を歩いていった。現状を理解したは組一同は次々と走って鈴を追いかける。
「今の掃除のお姉さんだよね!?」
「絶対そうだよ!エプロンしてたしモップとバケツと雑巾持ってたし!」
「せっかく会えたのに何で逃げたのかな〜?」
「恥ずかしがり屋さんなんじゃないの?」
「あ、そうかも〜」
「そんなことを呑気に言ってるバヤイじゃないでしょ!」
「見失っちまう!」
「それよりあの人どっかで見たことあるような…」
廊下で鬼ごっこをする鈴とは組の良い子たち。まったくもってシュールな絵面だが、鈴は真剣に焦っていた。何故追いかけてくるんだ。鈴は元来大人数の人間というものがあまり好きではないのだ。注目を集めるのも、駄目だ。特に子供なんてもってのほかだ。忍術学園に働く以上これもなおさなければいけない鈴の欠点だ。最初は競歩だったが今は全力で走っている。こっちの焦りも知らずに子供たちは声を投げ掛けてくる。
「お姉さん待ってください!」
「何で逃げるんですか〜!」
「ていうか逃げ足速ァッ!」
まだ追いかけてきているのかと鈴が走りながら後ろを振り向いたとき、廊下の角から誰かが来ていた。
「うわっ」
「ぶっ」
後ろを見ていた鈴は人が来ていたことが分からず案の定その人物とぶつかってしまった。鈴が止まったため追いかけていたは組の面々もドミノ倒しのように次々と止まっていった。
だが鈴は今はそれに構っている暇がなかった。誰にぶつかってしまったのか…ぶつけた鼻を擦りながら前を見る。目の前にいたのは自分より背が高い青紫色の忍び装束を来た少年であった。少年は目を見開いて鈴を見ていた。
「あっごめんねまさか人が来ていたとは思わなくて…君大丈夫?」
優しく鈴の安否を確かめる少年。そんな少年に鈴はストップ、と言うかのように手を伸ばした。
「いえ、今のは完全にこちらの過失です申し訳ありません」
鈴の業務連絡のような物言いに少年は少し呆気にとられた。この子は…多分新しい掃除の子だよね。初めて会った少女に好奇心がわいたが、それよりも何故は組と追いかけっこしてるのか不思議だった。
「すみませんが今とても急いでいまして。そこを退いてくださいませんか」
「えっ?あっはいっ」
鈴に言われた通り退けると、鈴は物凄い速さで遠く彼方へ走っていった。え、あの子忍者?
「あーーーー!」
「えっなに…?」
鈴が走り去っていったあとに倒れていたは組が口を揃えて叫んだ。
「不破先輩!何で捕まえなかったんですかー!」
「捕まえるって…犬じゃないんだから…」
「大丈夫だみんな!今からでも追いかけよう!」
庄左エ門の声に続いて不破先輩さようならー!と言っては組は向こうへ行ってしまった。取り残された「不破先輩」は嵐が過ぎ去ったような感覚だった。あれが新しい例の「掃除のお姉さん」か…。まともに姿を見たのは初めてだ。
「ていうか逃げ足速っ」
その日は結局は組が鈴を見つけることはなかった。
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