Working girl

□カレーうめぇ
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今日の忍務は、実習のわりには至極簡単な内容に僕は兎も角他の面子はつまらなそうな雰囲気を纏っていた。まぁ、その気持ちは分かる。なんせ内容は「森のなかにいる山賊を捕まえろ」だもんなぁ。何でこんな四年がやるくらいのレベルの忍務を僕ら六年がやるのだろう?先生達の考えることは何年経ってもよく分からない。

それでも授業は授業。ちゃんと手は抜かずに遂行しなければ。各自決めた木の上で山賊を見つけるため目を凝らす。この森は広いから、山賊を見つけるのはなかなか骨が折れそうだ。

「あ、れ?」

懐を見ると、応急措置のための少量の薬と包帯は入っていたが、苦無が一本足りなかった。もしかして落としてしまったのかも。うわぁヤバいよ山賊に苦無が見つかったら忍者がいると警戒されてしまう。警戒されたからといって勝てない相手ではないけど、少しでもある可能性は潰しといたほうがいいだろう?

「正確に言うと忍たまだけど…」

きっとさっきのいつもの不運で躓いたときに落としたんだ。はぁ…僕は何してんだか。早く拾ってこなきゃ!

目当ての場所まで木と木を飛び移りながら移動する。すぐについたが、ついた瞬間に息を飲む。人の気配がする。人数はきっと一人…。これは山賊だろうか。こちらの気配を消してその人物を見る。人物を視界にとらえた瞬間僕は瞬時に下へ降りた。



「何してんの!?」



苦無を持っていた女の子は、終始真顔で僕を見ていた。




***


「それにしてもいさっくんよく山賊見つけたな〜」

「おい小平太そのへんにしとけ。もう意識ねぇだろ」

「いやぁ、たまたま鉢合わせたんだ」

あの後、今回のメンバーである小平太と留三郎も来て、あっという間に山賊は倒した。小平太はもうすっかり伸びている山賊をまだ痛めつけている。あの癖、いい加減なおしたほうが良いと思う。

山賊を倒しても、僕の頭はさっき会ったボロボロの愛想のない女の子のことを考えていた。あの子は、ちゃんと家に帰られただろうか。それにしても何でこの森にいたんだろう?しかも忍者のゴールデンタイムであるこんな夜中に。いくらなんでも不自然すぎるが、僕には検討もつかない。今はここにいない仙蔵なら分かるかな?あいつ女の子に慣れてるし。

「はぁ…」

「伊作どうした?具合でも悪いのか」

「留さん…いや、大丈夫だよ」

「なんだいさっくん恋煩いかー?(ガスガス」

「だから小平太!もうそのへんにしとけって言ってるだろうが!」

「ちぇー」

恋煩い?

あの子に?

「いやいやいや、あり得ないよ留さん。それはないわ」

「え、何が!?」

「あっはっはっ留三郎は駄目だな!」

「うるせぇよ!ちょ、伊作俺お前になんかした?」

「え?何が?留三郎何言ってんの」

「お前が何言ってんの!?」

「今日のいさっくんなんか変だなー!」

全く、二人ともどうしたんだろうね。僕はいつもと変わらないのに。談笑もそれくらいにして三人で足早にその場を離れた。

「今日のランチはカレーらしいぞ!」

「ほんと?やったぁ」

「さっさと帰るぞカレーのために」

おばちゃんのカレーは格別なんだよね。特に実習後のは最高。きっと別の似たような忍務をしていた仙蔵と文次郎と長次も今頃学園に戻ってるだろう。

あれ?僕何か考えていたような…?

まぁいっか。早くカレー食べたい。




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