Don't think, feel !

□17話
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すぐに手を離そうとしたが、なんか空気的にそれができなかった。無言で手をつかみ合う私と大谷さん。なんだこのシュールすぎる絵面。

静かになった途端、洗面所で洗濯と戦っている竹中石田コンビの声がやけに強く聞こえた。なんとか会話を切り出そうとして視線を泳がすと大谷さんの腕の所の包帯が緩んでいることに気がついた。これだ!

「大谷さん!包帯、取れてますよ」

「…あ、あぁ」

「わ…わた、私が、巻き直しましょう、か」

「な…鈴が、か?」

何言ってんの私イイイイイイ!!!でもなんか言っちゃったんだもん!考えるより先に声に出してたんだもん!

ほら大谷さんだって困った顔してんじゃん!包帯で顔見えないけど雰囲気がなんかそうじゃん!

でも今さら引き下がれない私は大谷さんの手を離して取れかけの包帯を掴む。それからするすると綺麗に巻いていった。大谷さんは黙って最後までその一連の動作を見ていたけど、ほんとは嫌がってんじゃないかな。巻き終わってからよく分からない羞恥心が私を襲った。

「できました…」

「…すまんな」

「いえそんな…これくらいいつでもやりますよ」

大谷さんは何も言わない。少しは仲良くなれたと思ったけど、やっぱり私のことそれほどよく思ってないのかなぁ。別にいいけど、この気まずさくらいはなくしたい。

「鈴は、」

「はい?」

言いづらそうに大谷さんが口を開いた。もう課題を再開させようとしていた私は不意をつかれて少し反応が遅れた。なんでしょうか。大谷さんは視線をさ迷わせていたが意を決したように私へと向き直った。色が反対の目のなかに、私がいた。綺麗な目だなぁ。

「鈴はわれに触れて、何とも思わんのか?」

「…」













なんだそれ?




えっと、つまり自分を意識してないのかってことですか?いや違うよな。なんなんだその質問は。分からない。あれか、これは私が馬鹿だから分からないのか?

「えーっと、一体それはどういう…」

「われが病気の身というのに、何故ぬしはそう容易く触れてくる?気色悪いとは思わんのか?何故病が移ると警戒しない?」

私の言葉を待たずに大谷さんは言った。言葉のキャッチボールの大切さが今分かった。なるほど大谷さんはそのことをずっと気にしてたのか。私を嫌いだとかそういうわけではないんだな。あー良かった。

「われはぬしがよう分からぬ。ぬしは一体何を考えわれに触れてくる?」

何を……………別に何も考えていないんだが。

「われに気を遣っているのであれば、そのような気は一切無用よ。ぬしは素直にしやればよかろ」

自棄になったような大谷さんの言い分に少し眉をひそめる。石田さんが病気のことで大谷さんを気にしていたことを思い出した。きっと私には分かりえないことが色々あったんだろう。

…類は友を呼ぶというか、似た者同士というか。まったく面倒くさい大人たちだ。

「あー素直にですか。分かりました」




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