取り戻した先に
□7章
2ページ/6ページ
次の試合まではまだ時間がある。
『ねぇ、海士のところ行っても…』
『いけません』
…やっぱり。
『どうして?…どうしても?』
『どうしてもです』
そろそろわかってきた。
ここは…とにかく融通が利かない。
「海士…」
歌姫、を受け入れたからには
私はイタリアのために歌う。
そこに依存はない。
でも
海士が好きで
一度は歌のためにすべてを失ったけど
今なら…そんな選択は絶対にしないと思う。
海士を失ったら
今度こそ終わりかもなっていうくらい
そのくらい大好き。
だから
こうしている時間が苦しい。
わがままだって言われるかもしれないけど
正直、頼まれた側としてはもう少し私の自由も考えて欲しかった。
私は海士のことばかり考えながら次の試合を待っていた。