その他 短編/中編
□青春の秋桜
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私はそれからよく秋桜園に足を運んだ
教室にいるのは憂鬱で
花なんてかわいらしいものにさほど興味はなかったけど
秋桜の花は悪くないと思う
春はいつだってそこにいた
朝早くても
下校時間を過ぎても
雨が降っても
風が吹いても
いつでもそこで笑ってた
私はそこになにか用があるわけでもなく
いっては秋桜に水をやる
それだけだった
「最近は雨がよく降るから心配ないと思うけど」
春を無視して水をやる
他にやることもないんだ
ここにくる理由すら…
私が無言でいると
春は微笑んで話し始めた
多くの場合、春は一方的になにかを話していた
会話は成り立っていないに等しかった
けど
そこにいる限り続く春の声
それを不愉快に思ったことはなかった