その他 短編/中編
□青春の秋桜
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「そんな!春は必要だ…私、春が好きなんだ」
「知ってるよ」
即答だった
私は唖然として春を見る
「梓は僕に恋しているよ。そうでなければ僕は見えないからね」
意味がわからなかった
春が見えない?
疑問を浮かべた私に微笑むと
春は続けた
「君は青春に恋をしていた。
だけど君はずっと憧れていた青春の日々を掴み掛けている。
だから青春への恋は終わる。僕は君の前から消える。」
つまり
春は本当に私の青春だ、って?
―信じがたい
いや、ありえない
ありえない、はずなのに
春は本当に消えてってしまうんだ
「梓。くだらないなんて―そんな悲しい言葉は使わないでくれ。それが最期の願いだ―」
「春!」
春は消えた
あるべき姿に還った、とでも言うべきか
「―くだらない。きっと夢でも見てたんだ」
言ってはみたものの涙は止まらなかった