取柄を失った少女
□8章
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「あの…海士はフィフスセクターのことどう思ってる?」
そうきいた瞬間、彼の笑顔がこわばるのがわかった
それを見て聞いたことを後悔する
「あのさ、今なんて…?」
「だからその…フィフスセクター」
そう言ったら、今度は彼の顔から笑顔が消えた
「なんで…フィフスのこと知ってんの?」
「それは…まぁ…それで、どう思ってる?」
「どうって…」
「サッカーを管理するなんて、馬鹿げてると思わない?」
そう言うと、海士は少しだけ目を見開いた
心なしか少し安堵したように見えた
「俺は…よくわかんないけど…多分フィフスセクターを憎んでる」
「…!」
「俺たちから本当のサッカーを奪った奴らを…ほんとはさ、めちゃくちゃ恨んでんだよね、きっと」
口調こそどこか軽かったけど
そこには怒りが滲み出てた
「今までは諦めてたけどさ…新しくはいった中1見てたら…反抗してみんのもいいかなって思った」
「反抗…?」
「まぁまだどうすっかわかんないけどね!実は…俺ら、今それでちょっと割れてんだよね」
海士は困ったように頭を掻いた
多分、事態は結構深刻なんだよね
「そっか…大変だね、サッカー部も」
「まぁねー…自由にサッカーできるようになりたい」
「そうだよね…ありがとう。ごめんね、急に変なこときいて」
「ん、いや…なんか逆にすっきりしたかも。ありがとな」
そう言った海士の顔には元の笑顔が戻っていた