Tatsumi Dream

□face-off
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その日は通常業務を終え、麗奈は帰宅の途についていた。

病院では、特にできることもなかった。

話し合わなければならないこともあったはずだが、先生にしても、疲れ過ぎていて、何も話せる状況ではなかったようだった。


節子さんを死なせてしまった。
守ることができなかった。
今はまだ自分たちを責めることしかできなかった。





麗奈は脈打つ心臓を押さえながら、帰り途を歩いていた。

家に帰るのが恐ろしい。

今日まさに私は対峙しなければならないのかもしれない。

誰にも言ってはいない。

あの人のことを。


言えはしない。

自分で決着を付けなければ。
そうしなければ、麗奈は自分を自分で許すことができそうもなかった。






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自分の家の門の前に立つと、家の中からは何者かの気配がした。

今日は現れなければいい、ときっと麗奈は思っていたに違いない。


とても怖ろしい。


それでも、麗奈は門を開けて中に入り込んだ。

身体が震え出しそうになるのを懸命に堪え、ポケットの中の金属を握り締める。

十字架など、彼に効くのだろうか。

あの人は何者なのだろうか。


人ではないのか。

人として、あちら側にいるのか。


考えていてもきっと分からない。


麗奈は玄関を開け、中に入る。

キッチンから小気味いい包丁の音が聞こえた。


そっと足音を立てないように廊下を歩く。




このまま私を始末しにきたのだろうか。

私が普通に一人で帰ってくるなどと思ったのだろうか。

きっともうお互いに全て承知しているはずなのになぜ彼はこちらにやって来るのか。


疑問が次々に浮かんでは消える。


ドクドクと心臓の音が激しくなり、煩い。


部屋に入れば、確かに見知った姿があった。

少なくとも今彼は一人だった。

私と今対峙したとて、覆せる自信があるのだと思ったが、そうはいかない。

掌をギュッと握り締める。
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