Toshio's ROOM
□influence
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好きだと言えたならどれだけよかっただろう。
最中に好きだと言ってしまいそうになるのをどれだけ抑えただろう。
「脱いで」
朱音は敏夫にそう言われて驚いて体を揺らす。
まだ朱音は敏夫の膝の上に股がされたままだった。
明るい部屋で脱ぐのは抵抗があって、体を固まらせる。
彼はただただ自分を見つめているだけ。
そのままでいると、するりと胸の辺りを撫でられる。
触れられると胸の頂点を掠って、電流が走ったような快楽が迸る。
促されるように両手を服に掛けさせられて、朱音は抵抗できないかのように手を動かし始める。
部屋着として着ていたシャツのボタンを上から一つずつゆっくりと外していく。
ずっと彼はその様子を見守っている。
至近距離で見られる緊張感に、手が小さく震えるが、ボタンを外し終えると、敏夫がそのシャツを一気に肌消させて、胸を露わににさせて、手を通して服を完全に取り去る。
朱音は恥ずかしくなって顔を真っ赤にさせる。
どうせ脱ぐのだから、と下着ももうすでに外してあったので、もう上には何も着ていない。
「下着も付けないから、ずっと透けていた」
「だ、だってどうせ脱ぐから」
敏夫は無遠慮に朱音の胸に触れて両手で揉んでいる。
朱音は恥ずかしさと気持ちよさの狭間で腰を浮かせて敏夫に抱き付く。
「あっ…先生…もう、したいです」
なんとかそれを伝えれば、彼は頷いて返事をする。
「ああ」
そうは言うが、彼は朱音の腰を高く上げさせると、唇を胸に寄せて、その頂きを挟む。
舐められて、吸われると朱音は快楽に身を捩る。
「先生、きもちい…」
敏夫は片方を舐めて吸って執拗に攻めて、もう片方は指で擦ったり摘んだりして玩ぶ。
その度に朱音は体を震わせて、敏夫の頭を掻き抱く。
敏夫は朱音の腰を撫でて抱き寄せていたが、そのまま手を下にずらしていき、ズボンをずらして下着をずらす。
その隙間から手を差し入れて、もうすでに濡れている朱音の下半身に指を滑らせていく。
朱音はその快楽の期待に胸を震わせる。
そっと指を中まで入れられれば、朱音は快楽に身を委ねて甘い声を漏らす。
その声を聞いて、敏夫は乳首から唇を離して、小さく笑う。
「気持ちよさそうに鳴くもんだな」
そんなことを言われても朱音にはどうしようもない。
じっと見られているのが分かるが、下半身に指を出し入れされて、気持ち良くてたまらない。
「先生、もう、お願いです…」
そう瞳を潤ませて懇願すれば、漸く笑って体を離されて、ベッドへと導かれる。
服を全部脱がされてベットに座らされる。
彼も全部手早く脱いで、自分に向き直る。
部屋は薄暗いが、その体のラインは見て取れる。
何度もしているが、それでも緊張する。
そして快楽を期待して体が震える。
また始まりのように向き合って、何度も唇を合わせる。
指は体を滑っていやらしく動き回るが、それでもその動きは焦ったいほどに優しい。
それがもどかしい、と朱音は思う。
何度繋がったって愛おしい。
何も変わらない。
そんなつもりで始めたのではなかったのに。
優しく抱かれて登り詰めさせられて、余裕がなくなる。
その合間にも彼の瞳が垣間見えて、胸が高鳴る。
その度に、好きと言いたい気持ちを抑えなくてはならない。
その代わりに、ただ、愛おしい名前を呼んだ。
朱音にとってこんなことは初めてだった。
一度果てれば、それで繋がりは解かれて、終わる。
事後も胸に吸い付いたりはされるが、暫くすると彼はそのまま隣で気持ちよさそうに眠っている。
朱音は起きていて、眠っている彼の髪を撫でる。
疲れているんだろう。
起きる気配がなかった。
「先生が、すき」
きっと目が覚めているときには言うことはない。
それを口にするときは、お別れの時で、この村から自分がいなくなるときのことだろう。
そっとその頬に唇を寄せる。
柔らかな寝息が聞こえて、朱音は笑った。
今はまだ、このままで。
そう願った。