Toshio's ROOM

□entice
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もう何度も体を重ねているから、相手の良いところがよく分かっていて、簡単に快楽に堕ちていく。

それなのに、慣れるわけではなくて、何度こうしていても足りないとすら感じさせられる。

全然飽きることもなく、むしろ愛おしさと切なさは日に日に増していく。

それはきっといつか失ってしまうからだ、と朱音は思いながら、隣で眠る人の髪を撫でる。


先生はまだ起きる気配がなく気持ちよさそうな寝息が聞こえる。

自分の方は酔いが覚めて、目も覚めてしまった。


「……不倫、なんて、するつもりなかったんだけどなぁ……」


朱音はぼんやりそう呟いていた。

不倫なのだ、これは、と思い知っている。


だからきっといつかは終わりを迎えるのだ。

たぶん、終わらせるなら自分の方からなのかもしれない、とそんな風に思う。


初めは終わらせたい時に終わらせられると思い込んでいた。


こんなに好きになるなんて思っていなかった。
こんなに人を好きになったことも今まで思い返す限りなかった。

こんなことになるなんて、朱音自身意外でしかなかった。



朱音は体を起こして眠っている敏夫の隣に座る。

さら、と髪に触れると、敏夫は微かに身動ぐ。


起こしてしまう、と思って手を引くと、そのままゆっくりした動作で先生の手が伸びてきて、自分の手を柔らかく掴み込む。

一瞬ドキッとしてしまうのは、どうしてなのか、と思うと少し自分の心に自分で動揺してしまう。


どうやって忘れていいのかもう分からなくなっている。


「先生…」


そのまま手を引かれて、先生の口元に引かれていく。


そっと指の付け根の辺りを口付けられるようにされると切なさが増していく。


朱音は折り重なるようにして、愛おしさに任せて敏夫の頬に口付ける。

そのまま朱音は体を引っ張り込まれて胸に顔を埋められてぐっと引き寄せられる。

服はまだ着ていなかったから素肌のままで先生の吐息が胸元に辺りこそばゆい感じがする。

そのまま堪らず自分からも抱き込むと、腰辺りを先生にもきつく抱き締められるのが分かる。


「…今度は、2人で、どこかに行きたいです……」


そう呟くように口にしていた。
そして自分でも驚いて、誤魔化すように先生の髪を撫でる。

終わった後にシャワーを浴びたから、シャンプーの匂いが香ってくる。


「……朱音…?」


微かな吐息が胸元に当たって朱音は微かに体が震わせる。


「…いえ、なんでも…」





もしそれが叶うことがあるのならば、そのままこの人を諦めることにしよう。

最後に2人で過ごせるようなことがあればそのときはそれで最後にしよう。 


だから、まだもう少しだけ、傍にいたい。


だから、


「もうちょっとだけ、こうしててください…」


胸に掻き抱いて、思いを掻き消すことができるなら、それがよかったのに、ますます気持ちは募るばかりで、心が情愛で染まっていく。

あと少しだけ、と朱音は深く祈りを込めていた。
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