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□手付かずの世界
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ずっとアスマが好きだった
初めはありえねーって思ったけど、どんどん惹かれていって
いつのまにか気持ちが溢れそうになってた

アスマを目にする度に好きって言いそうになって
必死にそれを抑えて、なんでもないフリをする

苦しかった

だから、アスマの誘いに乗った

将棋の最中にいきなりキスされて驚いたけど、このまま流されてもいいかもって



それから関係を持つようになったけど、別に付き合っているわけじゃない

初めは浮かれてたさ
アスマのモノになれたんだって

でも違った

所詮オレは興味本意


だって、たまに女物の香水の匂いがするから

女を抱いた後、アスマは平気でオレを抱く

オレだってそこまで鈍くはない
跡だってついてるのにも気付く

ただ、何も言わないだけ


言ったら、この関係は崩れるから
少しでもこの位置にいたくて
今日も自分を押し殺す


たまに、縋りたくなる
アスマに手を伸ばして、助けてって

でも、それは許されないことだから
伸ばした手で必死に自分を抱き締めるんだ



街で、紅先生と歩いてるとこを見掛けた

最近、アスマと紅先生が付き合っているという噂をよく聞くようになった


この関係にも終わりが近付いてきた


別れを言われるのが怖くて、自分から距離をとった
誘いもなるべく断るようにして、空いた時間にたくさん任務を入れた


もうしばらくアスマに会ってない
未だ寂しく思うこの気持ちに蓋をするように仕事に没頭する


これでいい、これでいいんだ


そんなときカカシ先生に誘われて、家に遊びに行った

面白そうな本を借りて読んでいたら
目の前にカカシ先生がいて、頭を撫でられて

泣いていいよって、言われた

何を言ってるんスかと返そうとしたら、勝手に涙が出てきて
そのまま泣いてしまった

この人は鋭いから、オレの気持ちに気付いていたのかもしれない


一通り落ち着くまで、カカシ先生は何も聞かずに傍にいてくれて

帰るとき、またおいでって言ってくれたからオレは素直に頷いた







帰り道、久し振りにアスマに会った

さっき散々泣いたから、アスマを前にしても妙にスッキリしていた



いつものように笑って、久し振りって言ったらいきなり腕を掴まれた

アスマはすごく怖い顔をしていて、そのまま家に連れていかれた



着いた途端、玄関で押し倒されて無理矢理抱かれた


何度嫌だと叫んでも止めてくれなくて


どうして、こんなことをするのかわからなくて


苦しくて、堪らなかった





目を覚ますとオレはアスマの腕の中にいて
煙草の匂いに混じって、微かに香水の匂いもするけれど
その場所が心地好くて


あんなことをされても、オレは結局アスマから離れられないんだな

そんな自分がバカらしく思えて、静かに涙を溢した


アスマが寝てるのをいいことに

小さな声で自分の気持ちを吐き出して

キスをする





ごめんなさい
好きになって、ごめんなさい

もうこの気持ちは捨てるから




心の中で謝って


布団を抜け出した






けど、それは出来なくて


布団の中に引き戻されて

抱き締められる



わけがわからなくて見上げると、真剣な顔したアスマがいて


悪いと、言われた



それにまた、涙を溢しそうになって
必死に耐える


そしたら、たくさんキスをされて




耐えきれなくなった涙腺と心

涙を溢しながら、何度も好きだと言った






泣き疲れて遠退く意識の中
アスマの声がする



愛してる、って











その日を境に、アスマから女物の香水の匂いが消えた
紅先生と別れたという話も聞くようになった





そして、



「シカマル、愛してるぞ」





オレだけに言われるようになった言葉

嬉しさに笑みを浮かべてアスマに抱き着く






「オレもアスマのこと愛してる」

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