遊戯王5DXAL 3rd

□第77話:『生きる道!クロウVSドーソン』
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その頃、一人の男が、廊下を歩いていた。

セルビアの隊員の一人だ。



ドーソン:「総隊長が、死んだ…」
セルビアの総隊長である月荒をものすごく慕っていた男、ドーソン・パルディア。

月荒が死んだことが、今でも信じられない気持ちだった。





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数年前


独り孤独に生きていたドーソン。


自分を支える人はおらず、ただただ一人で生きていくしかなかった。


月荒:「何だ?一人か?」
そんな自分に声をかけてくれた人がいた。

それが、月荒だった。


月荒:「お腹空いているだろう。これでも食え」
そう言って、あの人はパンをくれた。

焼きたてのパンだった。

あのとき、自分は一瞬警戒していた。

こんな自分に声をかけてくる人なんていないはずだと思っていた。

月荒:「そう警戒するな。同じ人間だろ」
月荒はそう言って、パンをドーソンの鼻の近くまで持ってくる。

ドーソンの鼻にいい匂いが漂う。

我慢できなかったドーソン。月荒からパンを受け取り、貪り食う。


久しぶりにおいしいものを食べた。

こんなにおいしいものをくれる、この人はなんて親切なんだと思った。



そんな月荒は、ドーソンの横に座る。


月荒:「俺は月荒。中組織セルビアの総隊長をやっている。お前は?」

ドーソン:「ドーソン・パルディア…」
少し躊躇いながら、自分の名前を月荒に教える。


月荒:「お前、どうして、1人でいるんだ?家族は?」
単刀直入に気になることを聞く月荒。


ドーソン:「親は俺が生まれたときにはいなかった。養子として親戚の家に住んでいた。けど、そこの義理親たちも段々、俺に対して無責任なって来て…」
そう、ドーソンはずっと親戚の家に暮らしていたが、長くいたこともあり、そこの家の者たちに嫌な目で見られるようになっていたのだ。

最近じゃ、1人で「掃除しろ」だの、「料理しろ」など、家政婦扱いだった。


ドーソン:「俺はそれが嫌になって後先考えずに出てきたんだ」
月荒に本当のことを話すドーソン。なぜかわからなかったが、この人には話しやすかった。


月荒:「人間は、そういうものだ。本当の子供なんて、結局愛せないのさ」

ドーソン:「あなたは、親の愛を知っているんですか?」

月荒:「俺も物心つく頃には親なんていなかった。ずっと施設暮らしだったさ。だから、親の愛なんて知らない」

ドーソン:「俺、これからどうすればいいのかわからない。生きる価値がないなら、俺は…」

月荒:「俺のところに来るか?」
その言葉を聞いたドーソンが月荒を見る。


ドーソン:「俺がセルビアに?」

月荒:「ああ、俺が、お前の生きる道を作ってやる。セルビアのために働いてくれ」
月荒が立ち上がる。

月荒:「俺はな、この世界を変えるのが夢なんだ。愛が溢れた理想の世界。お前のような人間がいない世界をな。そんな世界を作るには、何十年、何百年もかかるかもしれない。だが、次元振動で、永久の命を手に入れた俺には、叶えそうな夢なんだ。それでも、1人でできるものじゃない。多くの手助けが必要なんだ。だから、どうだ?お前も来ないか?」
月荒はそう言って、自分に手を差し伸べてくれた。

その手を握るドーソン。久しぶりに笑った。






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そんな生きる道を作ってくれた月荒はデスリングに支配されそうになり、危険物として殺された。


ドーソン:「総隊長、俺は、どうすればいいんですか…?」
死んだ月荒に聞くが、勿論誰も答えてくれない。



ドーソンは”キラー・ザ・クロー”のカードを手元に取る。

そして、カードは輝き、クロータイプのデュエルギアとなった。

その鋭い爪の先を自分の顎に当てる。

ドーソン:「総隊長、すぐ行きます」
ドーソンは死ぬ気だった。

自分が生きていても仕方がない。

だから、ここで死ぬことを決意したのだ。
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