白い羽音

□翌日
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体が、重い。

名無しさんは忌々しげに溜息をついた。
私が人間なら、今日は起き上がれなかったのではないだろうか?
長時間、全身の筋肉を緊張させていたせいで、体のあちこちが軋んだ。

だが1時間もしない間にそれも治まるだろう。
自分の回復力が腹立たしい。
仕方なく名無しさんは仕事に向かった。


階段の手すりを磨いていると、またシエルが通りかかる。
「おはようございます、シエル様」
名無しさんは仕事の手を止めて挨拶をした。
今日はセバスチャンも付いている。
名無しさんの眉間は、しわを寄せた。

「ああ、おはよう」
そう言って一端は通り過ぎたシエルだったが、何かを思い出したように振り返った。
「セバスチャンに聞いたぞ」

何の事だか分からずに首を傾げると、シエルは続けた。
「『愛している』だそうだ」

「…っ!?」
思い出した。
セバスチャンは確かそう説明したと言っていた。

「違います!」
名無しさんは否定したがシエルは言う。
「セバスチャンがそう言ったんだ、こいつは嘘を付かない」
「ええ、私は嘘は申しません」
にっこりと笑うのが憎たらしい。
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