水色の春風
□春風
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その夜、名無しさんの部屋にはその水色のドレスが掛けられていた。
陰干しのためにクローゼットには入れず、その天板に掛けてある。
一度のお遊びのためにこんな物を用意して、エリザベスは本当にお祭り好きだ。
「あのドレスが気に入りましたか?」
気になって、ついそちらにばかり目をやってしまい、セバスチャンに笑われた。
「ち…違います。ただ、上質なドレスなのに着る人がいなくて勿体ないと…」
「あなたが着ればいいでしょう?」
自室のベッドの上、すでにお互い半裸で横たわっている。
「いつ着るというのですか」
自分に覆い被さるセバスチャンを、軽く睨んだ。
「あなたの心が、また迷子になった時にですよ」
そう言って、唇が塞がれる。
「ん…」
鼻にかかる甘い息が漏れた。
口内をセバスチャンの舌が這う。
手袋を外した手が胸肌を滑り降りた。
それだけで名無しさんの滑らかな肌は熱を上げ、潤っていく。
心地よさに胸がいっぱいになった。
胸の尖りに辿り着いた指が、それを押しつぶす。
「ふ…、ん…」
「何があなたを変えたのかは分かりませんが。せっかく開いたあなたの心、また閉じないうちに頂いてしまいましょうね」
「なっ……そんな、いやらしい言い方……」
「いやらしいのは、どちらですか?」
敏感な粒を舌で転がしながら、手はスラックスの中に忍び込んで来る。