水色の春風
□心音
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「ティータイムの後はダンスパーティーをしましょう! 皆にプレゼントがあるのよ」
エリザベスの声は弾んでいる。
シエルと過ごす彼女は、本当に幸せそうだ。
何の憂いも無く相手の心を求める事の出来る彼女が、羨ましいと思った。
「リジー、……ほら」
シエルがぶっきらぼうに、彼女に包みを差し出した。
「ここの所約束を反故にしてばかりだったからな、そのお詫びだ」
照れ隠しのためか、シエルはプイと横を向いている。
それでもエリザベスはキラキラと瞳を輝かせた。
「そんな事いいのに…。でも、ありがとうっ!」
嬉しそうに受け取り、リボンを解く。
だが箱を開けた瞬間「あっ」と小さく顔を曇らせたのを、名無しさんは見た。
それはほんの一瞬で、彼女はすぐに笑顔になる。
「かわいい〜〜! 何て素敵な靴なの!! ありがとうシエル、大切にするわ!!」
シエルの首に巻き付いて、嬉しさを表現している。
「お…大げさだな。どこにでもあるだろう、そんな靴」
「ううん。シエルが選んでくれたんだもの、嬉しいに決まってるわ!」
ピンクのリボンとガラス球の付いた、ヒールの高い靴。
エリザベスによく似合うだろうと、名無しさんも思った。