銀色の罪

□人質
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冷たい石壁の地下室に名無しさんはいた。
両手両足が縛られ、身動きが取れないまま、床に転がっている。
周囲には数人の男。
全身に付いた新しい傷が、名無しさんの衣服を赤く染めていた。

「おい、いい加減に吐けよ、死んじまうぜ」
中でも一番体格のいい男が、名無しさんの襟首を掴んで引き上げる。
「女王の狗に情報を流しているのはどこの奴だ!?」
「知らない…と…言っているでしょう」
「きさまっ! これ以上しらばっくれると、その綺麗な顔が二度と見れねーツラに焼けただれるぜ!!」
男は苛立たしげにオイルライターを取り出し、名無しさんの目の前で火を付けた。

「おい、顔は止めておけ、売り物にならなくなる」
別の男が止める。
「どうせ全身ボロボロじゃねーか、マット」
男は舌打ちをして、名無しさんを突き放した。
「うっ…」
庇うことも出来ずに後頭部を打ちつける。
それよりも、翼の欠けた背中が熱かった。
グレルにやられた傷もまだ塞がらない。
血を流し過ぎたのか、目が霞んだ。

「本当に手紙は置いてきたんだな?」
「ああ、“奴隷の密売を看過する用意をして、こいつを引き取りに来い”とな」
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