短篇

□あいつは犬で俺は猫
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どちらかと言えば体育系であることは自覚している。室内で読書したりするよりも外に出て生き物の世話をしていたほうが楽しいのも確かだ。

しかし、だからと言って年がら年中外で走り回っているかと聞かれれば否だ。
夏が暑ければだらけて何もしたくなくなるし、冬がくれば布団から出たくない。
そういうものだ。俺は例の暴君先輩ほど人間離れはしていない。

季節は冬。
生き物は皆冬眠し、生物委員会としての仕事はほとんどない。ついでに言うと今日は授業もない。
これはしめたと布団の虫になって冬眠していたいのは人間だって同じことだろう。
だのに、どうしてこの男は満面の笑みで人の布団をひっぺがしにかかっているのだろう…

ああどうしようすっごい殴り飛ばしたい!

「はっちゃん!!寝坊助は身体に悪いんだよっ、起きて〜」
「………やだ」
「気持ちいい朝なのに!」

目をキラキラさせて早く早くと急かしてくるもんだから、純粋に遊びたいらしいことが伝わってきて大声で怒鳴り付けることもできない。

「ねえはっちゃん、今日は委員会も授業もないんだよ?空気もカラッとしててひんやりして気持ちいいんだ」
「寒い」
「動いたらなんでもなくなるよ」
「え〜…」

頭まで被っていた布団からそろそろと覗くと、部屋の戸が少し開いていて外が見えた。
雪は降っていないようだがやはり寒そうだった。
ついでに兵助を見ると、目があって嬉しいというように破顔した。綺麗な顔だな。
俺がこのままだったら明らかにしょぼんとして可哀想になるんだろうな。どうしようかな。

「起きて。裏山か町に散歩に行こうよ」
「……………」

はぁ〜、と大きく重いため息をついた。
本当は、ほんっとう〜は、このまま温かい布団の中でぬくまっていたい。けれど俺はまがりなりにも生物委員会委員長代理、散歩をねだる大きなワンコを放置しておけるわけがあるまい!

…………だけど

「あと5分…だけ」
「うんっ」

とりあえず『待て』をさせて、俺は残り少ない至福の怠惰を満喫することにする。

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