短篇

□╋‥綾タカ
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雨の道



空が泣いてる。残念ながら無力な私にはその涙をとめることはできないから、ひとり、軒下でけぶる景色を眺める。
気分転換として金楽寺まで行こうと思っていた。行程を半分ほど進んだときに、ぽつぽつと雨が降り始めた。

「わ、本当に降ってきた」

傘を持ってくればよかったが、手間を嫌って濡れるのを前提で出てきたようなものだ。小雨のうちは割り切って歩いていたが、そのうち雨粒が大きく多くなり、ついに茶店で立ち往生となった。

「金楽寺までもう少しなんだけどなぁ」

ここまで来ると、諦めて引き返すというのも癪に触る。仕方なく雨がやむのを待つことにした。

湿気で髪が首筋にまとわりついて気分が悪い。何度払いのけても無駄だった。いっそのこと食満先輩や潮江先輩みたく短くしてやろうかとも思ったけれど、少し考えて笑った。
そんなことをすれば、あの年上の同級生が黙ってはいないだろう。普段から綾部の髪を褒めてくれていたから。意外と面倒見がいい人だから、頼めば綺麗に切ってくれるかもしれないな。
そういえば今日もしきりに雨が降るから傘を持っていけと言っていたような気がする。ならばこれは忠告を無視した報いというやつかもしれない。

「おばさん、お団子をひとつ」
「はいよ」

雨のおかげで時間はある。どうせなら有効活用しようと、茶店のおばさんが出してくれたお茶をすすった。
ばしゃばしゃと水の跳ねる音が近づいてきた。顔を上げると、右手に傘を差し左手で傘を持った人がこちらに駆けて来るのが見えた。

「すいません、お団子もうひとつ」



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