短篇
□╋‥くく竹
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湯あたり
実技の授業でくたくたになって、よろよろと入ったお風呂でうっかり寝てしまって、気がついたら自分の部屋で寝かされていて、苦笑した友人(雷蔵)が扇いでくれていた。
「はち、気づいた?大丈夫?」
「雷蔵…?」
「うん。今三郎が氷を貰ってくるはずだから、ちょっと待ってね」
「はちぃいいいいいッ!!!」
「!!!?」
「待てぇええッ兵助!!」
障子戸をぶち破る勢いで入ってきた半泣きの友人(兵助)が、そのまま寝ている俺を押しつぶした。「ぐぇ」と、まさしく蛙が潰れたような声をもらした。
次いで入ってきた友人(勘右衛門)は荒い息のまま兵助を引き剥がしにかかる。
「テメェこの豆腐野郎!!八左を殺す気かコラァッ!!!」
「か…勘右衛門、口調…」
「生きてたぁあああッ」
「……け…ど、…し……ぬ」
「どけヘタレ!はちっ、大丈夫?!」
豆腐野郎とかヘタレとか…
兵助も大概可哀想に、多少リアクションが派手なだけで言われ放題だなぁ。同情するが…頼むから人の上に乗っかってめそめそと泣くな、重い。
兵助が雷蔵と勘右衛門の二人がかりで引き剥がされたところで、四人目の友人(三郎)がひょっこり顔を覗かせた。
桶いっぱいに氷を携えて、得意気に雷蔵を見ている三郎は、まるで犬のように見えた。雷蔵も同じことを思ったのか、呆れながら三郎の頭を撫でていた。
「はち、具合はどうだ?」
「ぼちぼち…」
「兵助の馬鹿のせいではちが死にかけたんだよ!三郎も何とか言ってやって!!」
「えー…兵助ぇ、気ぃつけろよ」
あれ…、何か強かなお母さんと尻に敷かれるお父さんに見える。なんてくだらないことを考えていたら、額にのっていた手拭いがとられた。氷のぶつかる涼しい音と水の滴る音を聞いた後、再び手拭いがのせられた。今度は冷たくて思わず間抜けな声をあげた。
「ぅやっ…冷てぇっ」
「…ッはっちゃん可愛い!!」
「抱きつくな変態ッ!!」
「ちょっ…桶蹴飛ばさないでよ!?」
「……あ、」
ばっしゃっがらがらがらっ
俺の声に反応した兵助が抱きついてきて、勘右衛門がそれを引き剥がそうとしたら案の定、桶を蹴飛ばして布団もぐしょ濡れ。
雷蔵は俯いてぶるぶると肩を震わせ、それを見た三郎ががたがた震えて青ざめている。
かくいう俺も、額に青筋を浮かべることを抑えられなかった。
「「い組ぃいいいいいッ!!!!」」
(…南無)
三郎は黙ってい組に合掌した。
(看病という名の嫌がらせ?)