□オムライス
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 俺が何を考えたのかわかっているような言葉に苦笑するしかなかった。
 オムライスは結構作るのが難しい。
 この前初めて作ってみたが、チキンライスが少し溢れたり、めぐみほどにないにしろ卵破けたりして大変だった。
「お待たせー!」
 めぐみがオムライスを持って台所からお盆を持って出てきた。
 かおりさんは少し安堵したかのように笑っている。
 お盆の上には勿論、オムライスが四つあった。少し茶色い焦げ目がついてるが、前よりずっと美味しそうに見えるオムライスだ。
 あいつはその中で一番焦げ目が濃いやつを選んだ。
「ちょっと焦がしちゃったけど」
 あいつはえへへと笑いながら頭を掻く。
 次こそは……! と意気込むあいつに俺は自然と笑みが零れていた。
 あいつが作ったオムライスをじっと見つめる。
 この調子だと、あいつは来週くらいに完璧なオムライスを作れるようになるだろう。
 タイミングを逃したかもしれない。
 俺はオムライスを頬張りながら、そう考える。
 別に俺が勝手にやろうと思ったことだから、タイミングも何もないんだと思うけど……。
 オムライスは前と変わらず美味しかった。
 手を合わせて「ごちそうさま」と言うと、あいつとかおりさんは嬉しそうに笑っていた。
「めぐみちゃん、本当に美味しかったよ! ありがとう!」
 真央がお礼を言うと、あいつははにかんだ。
「ほんと? それじゃ来週もオムライス作っちゃおうかな?」
 その言葉に真央は「だったら!」と一回パチンと手を叩いた。
「来週はお兄ちゃんが作るっていうのはどうかな?」
 思わず、俺は「えっ」と声が漏れる。
「オムライスを?」
「うん。オムライスがいいの」
 真央が笑って言うと、俺に親指を立てた。
 ――兄妹って不思議なものだと思う。
「その、日頃のお礼って奴だから」
 俺が頬を熱くさせながら俯きつつ言うと、あいつは「それじゃあ、来週楽しみにしてるね!」と笑った。
 そして、家に帰ると、真央が「中途半端なものは作れないね」とニヤニヤ笑ってきた。



 俺はオムライスを頬張るあいつを見て、笑っていた。
 あいつは頬を抑えて、本当に美味しそうにもぐもぐと食べている。
 その表情に沢山練習して良かったと思った。文句を言いつつ付き合ってくれた真央や母さんには感謝だ。
「あんな風にふわっと卵を包めるなんて知らなかったよ!」
 あいつがフライパンを持つジェスチャーで俺の真似をしてみせた。
 あいつの「凄いよ!」って声がこそばゆく感じる。
「私、こう慎重にしないとなかなかうまくいかなくて」
 あははと笑うあいつに、俺は笑顔を作った。
 きっと、今あいつが作れば綺麗なオムライスが出来ていたと思う。
 だけど……。
 自分で作ったオムライスをじっと見つめる。
 俺はあいつの少し不恰好なオムライスが好きなんだと思う。
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