文
□熱が上がれば
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熱を出してしまった……。
せっかく皆で合宿に来てるのに、何てことになったんだろう。
皆と頑張りたいなぁー。
海で濡れたとき、誠司の言う通りにしとけば良かった……。
くしゃみが一回出てしまう。同時に寒気もした。
いつもなら、そのあと誠司の声が聞こえてくる気がした。
そのことに少し寂しく思い、私は身体を起こしティッシュを探す。ベッドの近くにあったので助かった。
そういえば、風邪を引いたとき、心細く思ったときにいつも誠司が来てくれたっけ。
昔、風邪で遠足に行けなかったとき、お土産にたんぽぽを持って来てくれた。
まず思い出すのは、そのことだ。
ずっと遠足を楽しみにしていたのに行けなくて、悔しくて悲しかった。
皆、楽しかったんだろうなーって思うと、ちょっぴり寂しくなった。
だから、誠司がお見舞いに来てくれたときは本当に嬉しかったなー。
あのたんぽぽ、お母さんに教えて貰って押し花にしたんだよね。
あと、確かお母さんが病院に行く日なのに風邪を引いてしまったときも誠司がお見舞いに来てくれた。
私が起き上がって何かしようとするたびに寝かしつけてくれた。
氷枕を用意してくれたり、タオルを入れ替えてくれたりして、気が利いてて誠司は凄いなって思っちゃった。
誠司はきっと良いお父さんになるなーってぼんやりと考えていたっけ。
早く治さなきゃって気合いで頑張った。
――熱上がっちゃったのかな?
なんだか、今楽しい気分になっちゃってる。
それと同時に、妙に気恥ずかしい気分になって寝返りを打つ。
そういえば、どうして私はあのとき風邪を引いたんだっけ?
遠足のときは前日にわか雨が降ってきたような……。
濡れちゃったけど、すぐに晴れたしひんやりと冷たい服は気持ち良かったから特に焦らずに帰ったんだっけ。
それで、家に着く頃にはお天道様の力で乾いてて。
友達に傘を貸して帰ったときもにわか雨でそうだった気が……。
そして、今……。
うぅ、私って成長してない。