沖田双子妹

□みんなでプール!
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夏だ!海だ!スイカ割りだ!


「ってことで来ましたプール!」

「なまえ誰に言ってんだ?早く行くぞ」

「はーい!」


あたしの荷物を持ってさっさと歩き出したトシ兄に置いてかれないよう、膨らました浮き輪片手に背中を追った。





世間は夏休みだってのに、あたしたちは毎日毎日暑い中仕事。
有り得ないくらい熱を吸収する隊服を出来るだけ涼しくなるよう工夫して、日陰でガリゴリ君を総悟といさ兄と食べてた時に、転機は訪れた。


「テメーら暑さにヘバってんじゃねーぞ」

「とっつぁん!!?」


廊下の向こうから現れたのは、トレードマークのサングラスをかけ警察庁長官と言うよりはヤクザ顔をした、我らがとっつぁん。
疲れた顔をしたトシ兄を後ろに従わせ、拳銃をくるくる回している。


「よォなまえ。今日も可愛いねェ。うちに住む気にはなったかァ?」

「何言ってんだとっつぁん!なまえちゃんはここからは出しません!」

「うるせーよゴリラ。テメー暑いからってなんだその服装は」

「え、ああ、これは」

「んな暑いなら風通りよくしてやるぜェ」

「涼しくなる通り越して体冷たくなったまま戻れなくなるから銃しまってェェェ!」


廊下で騒ぐ暑苦しい2人を、ホント何しに来たんだとガリゴリ君を食べながら呆れた目で見る。

ってかとっつぁん暑くないのかな。あたしたちより制服の丈長くしてるんだから、その分絶対暑いよね。

そんなことをつらつら思ってたら、スカーフを外したトシ兄が話を戻してくれた。


「で、とっつぁん何か用あったんだろ?」

「おお、そうだった。はいなまえ」

「え?」

「この前キャバ嬢の女の子からもらってな、それ。俺ァ行かねーし栗子も行ったことあるみてーだから、オメーにプレゼントだ。

久しぶりの江戸の夏、楽しんでこい」

「「「!」」」


3人がその言葉に反応してあたしを見たけど、それよりもあたしは渡されたものに釘付けになった。

手にあるのは4枚の大江戸プールの無料券。この夏リニューアルした大江戸プールは、特集番組が組まれるほどの人気スポットで、TVやCMで見る度に行ってみたいなあって密かに思ってた。


「い、行ってもいいの?」

「おうよ。年頃の女の子が夏に思い出作らねーなんて勿体ねェだろ。友達とでも行ってきな。あ、写真忘れないで撮ってきてね」

「やったあ!ありがとうとっつぁん!!!水着姿で良い?」

「いいよォ〜何枚も撮ってきて良いからねェ〜」

「アンタそれが目的か!!!」


トシ兄のツッコミをひょいと交わし、じゃあなァと来たときと同様風のように去っていった。





その場に残されたあたしたち。いさ兄はチケットを持つ私の隣に来て、嬉しそうに頭を撫でてくれた。


「なまえ良かったな!明日にでも行ってこい!」

「とっつぁんもたまには良いことするんですねィ」

「なまえには甘いからな、あの親父も」


手元にあるチケットは4枚。あたしを抜いたら3人行ける。


「なまえの友達といやァ…チャイナと志村の姉と…」

「とっつぁんの娘は行ったことあるんですもんねィ。となると」

「あれか、柳生家の跡取り!」

「火消しとも仲良かったですぜ」

「何故か吉原にも仲良いヤツいたなァ。あと鍛冶屋の女とも」


日陰になった縁側であたしの交遊関係について話し出した3人。

…この人たちは何であたしの友達を知ってるんだろう。特に吉原関係。あれか、退に調べさせたのかな。退あとでシメる。

誰と行くかを想像してくれてるとこ悪いんだけど、もう決めてあるんだよねェ。


チケットの期限はこの夏いっぱい。枚数は4枚。


「ねぇ、みんなで行こうよ」


あたしが行きたかったのは目の前の3人。自分ばっか遊ぶのに罪悪感を感じるとかそんなものの前に、ただこの3人と遊びたかった。

そう言った時のそれぞれの驚いた顔に、あたしはにっこり笑った。





「でもなまえ、ホントに俺たちでよかったのか?チャイナとかいただろう」

「いいに決まってるじゃん。それに4人で遊びに行くなんていつぶり?3年ぶり?」

「そんくらいだな。こっち来て早々ターミナル見に行ったっきりだ」

「でしょー?だからいいの。神楽たちと来るのも楽しいと思うけど、たまには4人で遊びたかったんだよ」


ね!と腕を引けば、ならいいけどよ、とくしゃりと髪の毛を混ぜられた。そして目を細めて笑ったトシ兄に笑い返して、いさ兄が場所を取ってくれてるところまで早歩きをした。





 

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