沖田双子妹
□お姫様の愛車
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ブオオン、と玄関前でエンジン音がする。
見回りに行こうと玄関から出てきた土方は、ほォと声を漏らした。
「整備か?」
「うん。あと拭くだけ」
なまえはバイクから視線を外さないまま答える。
タオルを首にかけて、カチャカチャと工具を片付けオイルの封をしている姿は一般的に見れば年頃の女らしくはなかったが、なまえは好きでやっているので土方も何も思わなかった。
「この暑いのに見回り?」
「暑さは関係ねぇだろ。つか近藤さんと回るんだが…」
「朝イチで妙んとこ行ってたよ。でもそろそろ戻ってくるんじゃない?」
近藤が来るまでなまえの整備の様子を見ることにしたのか、土方は日影に立ち煙草を吹かしている。
濡れたタオルと乾いたタオルで綺麗に磨かれていく白バイは、なまえ専用。なまえに甘い松平が誕生日プレゼントだと与えたものだ。
警察の車には大江戸警察と書かれているのだが、この白バイには真選組と書かれていた。何故かはなまえしか知らないことだが、土方はそのロゴが書かれたバイクのことを密かに気にいっていた。
丁寧に磨きあげるその動きに、本当に好きなんだなァと目を細めてなまえを見る。
「名前何つったっけ」
「バイクの?」
「おー」
「サド子1号」
「ホントセンスねぇなテメーら双子は!!!」
自分が聞いたくせに!と怒ったなまえは土方を睨み付ける。それを呆れた溜め息で返して、サド子と名付けられたバイクに近づく。
「サド丸だったりサド子だったり……まあいいけどよ。ところで整備はもういいんだろ?」
「え、うん。今日は点検と外装綺麗にするくらいだったから」
「そういやなまえ、オメー朝の見回りサボったよな?」
「……イキナリ何ヲ言ッテルノカ分カリマセーン」
「俺乗せて見回りに行くならチャラにしてやるぜ」
「は!?」
何を言ってるんだと怪訝な顔で土方を見上げる。予想通りの反応に笑ってその顔に煙を吹きかけ、噎せたなまえの手を引き屯所内へと引き返す。
「ゴホッゴホ。何すんのマヨラー!ってかどこ行くの!?」
「ヘルメット取り戻るんだよ。なまえのも部屋だろ?」
「そうだけど…ホントに乗るの?」
「あ?ダメか?」
「いや、いいんだけど…もう落ちないでよ?」
「あん時も落ちてねーよ!ちょっと体がバイクから離れただけだ!」
「それを落ちたって言うの!素直に認めなよ!」
言い合いをヒートアップさせながらなまえと土方は廊下を歩く。擦れ違った隊士からはどうしたんだと視線を向けられるも、ムキになっている2人は気づかない。
土方の部屋前まで来たところで、取ってくるとスタスタ入っていってしまう。その背にフンと鼻息を荒くして、なまえも部屋へと向かった。