沖田双子夢 2

□寝る子は育つ
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「チッ、あの双子どこ行きやがった」


ドスドスと足音を鳴らしながら廊下を歩く。土方はいつも以上に瞳孔を開き、仕事をしない双子を探し回る。
沖田は見回りの時間でなまえは土方と共に書類整理。なまえは書類整理に関しては見回りより真面目に取り組むが、サボる時は徹底的にサボる。おかげで2倍に膨れ上がった仕事量と、沖田と共に見回りをするはずだった隊士が庭で黒焦げになっているのを見てストレスが爆発した土方は、今日こそは見つけ出してやる!と意気込んで副長室から出てきたのだ。


「部屋にはいねぇし、靴はあったから外には行ってねぇし」


一ヶ所ずつしらみ潰しに探していく。時間は刻々と過ぎていくが、今日終わらなかった分は意地でもアイツらにやらせると決めているので、ドスドスと構わず廊下を歩いた。

ポカポカする体温にふと空を見上げれば、そこには雲1つない快晴。昨日のニュースで「明日は春らしい暖かな陽気でしょう」と言っていたのを思い出す。

やっと冬も終わりか…今年寒かったもんな。

そんなことを考えて、パッとある場所を思いつく。


「見過ごしてたぜ」


隊服を翻して、土方はそのまま廊下の奥へ向かっていった。






「ったく、あの双子どこ行ったんだ」


高い位置にある黒髪を揺らしながら、道着を着たままの土方は廊下を進む。

昨日までの寒さが嘘のように、今日は春の陽気だった。稽古中汗を流しながら竹刀を振っていたが、昼過ぎから先輩である沖田がいなくなる。一緒に稽古をしていた妹のなまえもいなくなっていたので、近藤は一緒にいるだろうから平気だ!と笑い飛ばし探しには行かなかった。

しかし稽古が終わっても戻ってくる気配がない。近藤は大丈夫だと言うが、まだ近藤の元に身を寄せたばかりの土方は幼い双子の行方が不安になる。

そんな土方に近藤は言った。


「そんなに気になるなら、廊下を進んだ先に行ってみるといい!」


別に気になってねぇよ…とぼやきつつ、太陽が赤く照らす廊下を歩いていった。

廊下を1番奥まで進むとそこは畑だった。田舎ゆえか近藤家の敷地は広く、道場の他に住居や蔵、小屋もあり、見つけた畑もその1つだ。初めて見たその畑は近藤の祖父が趣味でやっているもので、様々な苗が植えてあった。

そんな畑が見渡せる廊下の終わりに身を寄せあって眠る、土方が探していた双子がいた。






「あ、トシ」

「近藤さん?」


目的の場所には背を向けた近藤がいて、土方の足音でパッと振り返る。何でこんなとこに、と土方が首を傾げると、近藤はデレッとした笑顔を浮かべて手招いた。


「ちょっと見てみろ」

「ん?―――…あ」


指されたものを中腰の近藤の上から覗く。

そこにいたのは暖かな日差しを浴びて身を寄せあって眠る、土方が探していた双子がいた。

庭に背を向けた沖田とその兄に向かい合うなまえは、珍しいことにあの人をバカにしたアイマスクをしていなかった。


「やっぱりここにいたか」

「探してたのか?」

「たりめぇだ。コイツら仕事サボりすぎなんだよ」

「たしかに昨日コタツにいたもんなあ」

「だから今日こそはと思って来たんだ、が」


チラリと眠る双子に視線を向ける。アイマスクなしの寝顔を見るなんていつぶりだろうか。特に沖田は珍しい。何とく物干し竿を見れば赤と青のアイマスクが交互に並んで干されていた。…数は数えきれないが。

近藤はデレッとしたまま、携帯で貴重な素の寝顔を何枚も撮る。深く眠っているのか起きる様子はない。

すやすや寝ている双子と優しい表情を浮かべる近藤を見て、はああと溜め息を吐いた土方は静かに縁側に座る。

鬼だなんだ言われてはいるが、彼は結局甘いのだ。


「起きたら溜まってる仕事が終わるまで寝させねェ」

「あ、俺今日提出書類まだやってない」

「…」





 

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