沖田双子妹
□侍は刀を持ちなさい
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「御用改めである!1人残らず捕まえろ!」
うおおおおお!
土方の突入の声で、隊士が勢いよく流れ込んだ。やはり気付いていなかった真山一派は慌てて刀を取り、応戦する。裏口からも近藤たちが突入し、コンテナ内は一気に騒がしくなった。
キン、キン、と刀がぶつかる音がする。
過激派と言うだけあって一瞬の動揺からの持ち直しは早かった。しかし土方はそれも想定内だったため、一気に畳み掛けろ!と隊士を鼓舞する。
沖田は目の前の敵を切りながら、突っ込む気満々だったなまえを探す。意外にも彼女はすぐに見つかり、自分と土方から一定の距離を保ちつつ敵を切っていた。
真選組を立ち上げてすぐになまえは京へ飛んだため、彼女が人を切るのを見るのは数回目だった。
自分より早いだろう剣筋は、敵がそれを見極めようとする前に体を裂く痛みと変化する。力はないものの刀を操る速さを生かし、なまえは沖田と並ぶ刀の使い手だ。
だから沖田が心配しなくとも、なまえは弱くない。けれどどれだけ強かろうが心配なものは心配だし、気になってしまう。
その視線に気づいたのか、なまえが移動し沖田と背中合わせに刀を構える。
「視線が痛いよー敵の殺気より痛いよー」
「嘘付けィ。つかオメー後ろにいろっつったじゃねーか」
「だからいるじゃん、後ろに」
話ながら目の前の敵に切りかかる。互いの背を守りながら、円を描くように動くので死角はなかった。
体を動かしながら、沖田は言葉の意味を考える。
なまえは沖田と土方から一定の距離で刀を振るっていた。
その位置とは、どこか。
「後ろか」
「ね?いたでしょ、後ろに」
フン、となまえが笑う。土方の言った言葉をそのまま、なまえは彼ら2人の後ろにいて敵を排除していた。
それは即ち背中を守っていたと言うこと。
「…そろそろかなァ」
「何か言ったかィ?」
聞き取れなかった言葉を聞こうと距離を縮めた、その時、
バチン!
「なっ!?」
突然ブレーカーが落ち、コンテナ内は真っ暗になる。
明かりに慣れていた目は急な暗闇に対応できず、誰が味方か敵かが分からない。
動揺する隊士に土方は怒鳴る。
「焦んじゃねぇ!目を凝らせ!」
暗闇の中声を発すれば、見えなくても位置を把握されてしまう。それを分かった上で動揺した隊士に言い放った土方を、敵が見逃すわけもなく。
暗闇の中、土方に向けて銃が向けられた。
「トシ!」
「副長!」
土方が向けられた殺気に刀を構える前に、銃が放たれる。
「遅いよ」
キン!と土方の目の前に来た風によって、向けられた弾は弾かれた。
そして電気が付いた。
土方の側にいるはずの人影はなく、明かりの中に見えたのはなまえが真山の首筋に刀を当てているところだった。
土方を狙っていただろう男は大和が、幹部の男たちは和泉やその他の隊士が抑えていた。
「言った通り、頭はあたしが抑えたよ」
にっこり笑ったなまえに、一瞬の出来事に呆気に取られていた隊士たちは声をあげて喜んだ。