短編
□愛車はワーゲンです
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ぺたぺたとスリッパを鳴らして歩く。久しぶりに来たけど全然変わんないなあ。あ、あの落書きまだあったんだ。あんなの書くなんて若かったわ、あはははは。
思い出にに浸りながら廊下を突き進む。楽器を持った吹奏楽部とかの文化部の生徒がすれ違うくらいで、放課後だから人はいない。
ぺたぺた鳴る少し年季の入ったスリッパに書かれた学校名。
ここは私の母校―――銀魂高校
「失礼しまーす」
カラリと職員室のドアを開けると、知った顔と知らない顔が私へ向く。
その中で知った顔が満面の笑みで来てくれた。
「おおお!なまえじゃなか!元気しとったか?」
「辰馬、一昨日飲んだばっかりでしょ。ってかアンタ本当に教師だったんだね」
「だから言うたじゃろう。ワシは嘘はつかぇい」
「ごめんごめん。ねえ辰馬、あの白髪が見えないんだけど…」
「金時のことがか!あの男なら今部活に行ってるぜよ」
「部活?」
銀魂高校は部活動が盛んな学校だ。運動部から文化部まで、熱が入っている。
なのに、だらけきった性格の銀時が部活の顧問?いやいやあり得ない。けど辰馬は嘘つかないし…
辰馬の瞳をジッと覗く。サングラス越しからはうっすらとしか見えないけど、綺麗な目を向けていた。
「何の顧問してるの?」
「剣道部じゃ。剣道場でやっちゅうよ」
「そっか、ならちょっと見てくるわ」
「行ってら〜」
笑顔の辰馬に手を振って、私は来た道を戻る。