短編

□だって双子ですから
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血に濡れた体を綺麗にし、風呂から上がった沖田は廊下を進みながら朝日が照らす庭を視界に入れる。朝露に濡れた草木をぼんやり見て、ふああと欠伸をした。

自分の部屋の明かりは見えない。女の風呂はなげーなァと襖を開ければ、案の定なまえの姿はなく、討ち入りに向かう前で時が止まっていた。

欠伸をしながら布団を敷き、枕を2つ置く。春になったとはいえまだ朝晩は肌寒い。ストーブで部屋を暖め、なまえが来るまでに準備を整えていった。


沖田は普段の様子(土方を狙ったり仕事をサボったり)から人のために何かをしたり、思いやる行動は想像がつきにくい。実際人のためと表立って体を張るより、自ら嫌われ役になり刀を振るうタイプである。
しかしそんな沖田の優しさを、知っている人は知っている。特に妹であるなまえにはその部分が顕著なので、隊士たちは微笑ましそうに影から隠れてよく見ていた。(目の前でそんな顔をしたら沖田の真っ黒い笑みを向けられるからだ)


「早かったね」

「お前が遅いだけでィ」


気配はしてたので、突然掛かった声にも驚かずに返す。部屋に入ってきたなまえは手に持つお盆に気を付けつつ、布団の上に座った。


「はい、お茶」


ちょうど喉が乾いていたので、沖田はぐいっと煽る。熱すぎず冷たすぎず、飲みやすい温度は体に染み渡った。
なまえも暖まった部屋で、こくりこくりと湯飲みを傾ける。

おかわりいる?と聞かれ大丈夫と返し、湯飲みをお盆に置いてからストーブを切る。なまえも飲み終わった湯飲みを片付け、少し換気をしてから襖を閉めた。

沖田の返事以降から言葉はなかったが、阿吽の呼吸でそれぞれが寝る準備をした。2人はあまり会話をしなくても、相手が何を考えて何をして欲しいか分かることができる。双子のなせる技なのか、それは小さい頃からそうだった。

布団を顎下まで持ってきて、体を覆う。外は明るくなってきていたが討ち入りに参加した隊士は午前中は非番になっている。
まあ副長補佐のなまえや隊長の沖田は仕事があるのだが、そんなことはお構いなしに大きく欠伸を一つ。


「「おやすみ」」


向かい合うように横になりながら、言葉を重ねて2人は目を閉じた。

次に目が覚めた時、まず見えるのは互いの顔だろう。例え起こしに来たのが口端を引くつかせた土方だとしても、3年前も、3年後の今も、それだけは変わらない。






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