沖田双子妹
□何事も最後まで確認すること
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「どうしたんでィ?」
「あ、隊長…この男が何かのボタンを押してしまって」
「ボタン?何だそりゃ」
「それが何度聞いても口を割らないんですよ」
ほとほと困った顔をしているうちの隊の隊士から、何かのボタンを押したらしい男に近づく。後ろ手で縛られている男は俺を見ると、血塗れの顔をにやりと歪ませた。
「何が可笑しいんでィ」
「ククク、そんな澄ました顔してられんのも今のうちだぜ」
「オイ、どういうことだ」
「…なに、あと少しで分かる」
近藤さんが男に聞くが、何かを待っているような科白しか言わない。増援か?しかしボタンというのが腑に落ちない。
考えても分かんないから完全に口を割らせようと刀を抜き、男を拷問にかけようとした、その時だった。
ゴゴゴゴ!
「何だ!?」
近藤さんが焦ったように周りを見る。地響きが体を揺らし、立っているだけでやっとだった。視界の向こうには土方さんと山崎がいて、同じように揺れに耐えていた。
「ククク、ハハ、ハハハ!遅かれ早かれテメーら幕府に使ってやろうとしたもんだ!精々抵抗するんだな!」
「くっ、この野郎一体何したんだ!爆弾か?増援か?」
だんだんと揺れが収まる中、隊士が男の胸ぐらを掴んで問いただす。しかし口から血を流した男の体は、だらんと揺れるのみ。
その男から視線を外し、走って近づいてくる土方さんと山崎に首を振った。
「チッ、舌噛みきったか」
「どうしましょう。他の浪士はもう連行しちゃいましたし、残ってる隊士も俺たちだけです」
この場にいるのは近藤、土方、沖田、山崎、一番隊の隊士のみ。この少人数で今から起こる予想外の事を対処しなければならないのだ。
息を潜め、屋敷の方に目を凝らした。
ドガァァァァン!!!!!
「「「!!?」」」
揺れが完全に収まり身構えた瞬間響いた、地面を震わす轟音。屋敷から何かが飛び出て、隊士の1人が急いでライトを向ける。
「なっ!?」
そこには緑色のスライムのような皮膚にぎょろりとした目玉、大きく裂けた口を持つ、えいりあんがいた。