沖田双子妹
□デシャヴ?デジャブ?
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「りーつ」
「やあなまえ、おはよぉ」
「おはよ!」
副長室に向かうなまえの前から、四番隊隊士の倉田律が歩いてきた。沖田と同じくらいの身長に、甘ったるい口調、そして緩やかな焦げ茶のウェーブをふわりと揺らすハニーフェイスの彼は、チンピラ紛いな真選組の中で異色の存在感を放っている。なまえと並んでいるとまるで仲のいい女友達のようだ。
その律は手に持っていた書類をひらひらと揺らし、なまえに手渡す。
「はい、お願いね〜」
「ついでに手伝ってくれたり」
「副長補佐の仕事は僕にはできないよぉ」
「またまた〜。で?今日はどこ行くの?」
「団子屋のお梅ちゃんのところ」
にっこり笑った律に、前はお鶴ちゃんじゃなかった?と返せば、お鶴ちゃんには明日会いに行くんだと返ってくる。
律は女癖が悪いわけではないが、結構軟派な性格をしている。分かりやすく言えば、女の子はみんな可愛いよぉと平然と言ってしまえる持ち主だった。だから律が見回りの途中に女に会いに行くのも、隊士の一部では当たり前となっている。
「おやつの時間に帰ってくるなら白木屋の大福が待ってるけど」
「ホント?それってなまえも一緒?」
「もれなく総悟も」
「あはは、隊長がいるのは分かってるよぉ。じゃあそれまでに戻ってきまーす」
「あ、律」
「んー?」
「明日はやっぱお松ちゃんにしたら?昨日会ったとき、律に会いたがってたよ」
「ふふ、お松ちゃん可愛い。じゃあお鶴ちゃんの後に会いに行こうかなぁ」
「よろしく。じゃ、後でね」
「はーい」
にっこり笑った律に笑い返して、なまえは目的地である副長室に足を向けた。
大福の中身、こしあんだといいなあ。