沖田双子妹
□秋の祭りもオツだよね
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射的屋で全商品落としたり(総悟は店主さんと顔馴染みなのか無料だった)、チョコバナナや綿あめを食べたりと屋台をある程度冷やかした後、最後に行きたかった屋台へ顔を出した。
「おじちゃん!たこ焼き3つ!」
「はいよ!おやカップルかい?」
「そうでィ。お似合いだろ」
「あっはっは!美男美女な2人にはオマケしちゃうよっ」
「わあ!ありがとう!男前なおじちゃん!」
「あざーす」
ノリのいい会話でたこ焼きを買って、イカ焼きと焼きそばを持った総悟と花火が見える場所まで歩く。
打ち上げる時間が近いのか人が高台へ上っていく中、あたしは総悟に連れられて人の並みとは逆方向へと進む。
「うわあ!」
着いた先は人が誰もいない、小さな高台。でもそこはお祭り会場と打ち上げ場所が一望できる、特等席だった。
「総悟何でこの場所知ってるの?」
「前にカラクリぶっ壊してる時たまたま見つけてねィ。知ってるのはなまえくれーだぜ」
「マジでか!」
その言葉に嬉しくなって、見渡すために置かれたベンチに総悟を引っ張った。痛ェとか聞こえたけど、ちゃんと来てくれるとこが優しいよね。
「もう時間かな」
「そろそろ…」
ドドーン!
音と共に、視界いっぱいに花火が咲いた。
光の舞が夜空に広がり、あたしたちは美しさに見惚れて暫く無言だった。
最近の花火は発展したのか、光の滝や連続打ち上げの他に、ハートなどの模様までも浮かび上がらせ、本当に美しかった。
最後の打ち上げが終わり、辺りは静かになる。
隣の総悟を見れば、総悟もあたしを見るところで、顔を見合わせて笑った。
「さて帰りやすか」
「お土産このくらいでいいかな?」
「足りるだろ。祭りに来てる隊士もいたしな」
「彼女と来てたみたいだから、明日詳しく聞いてみようかな」
「そしたら教えろィ」
「任せて。あ、たこ焼きにマヨネーズ忘れた」
「懐に常備してるくれーだから自分でかけるだろ。つかマヨネーズいらねーつったの俺」
「あ、そうなの?まあトシ兄なら自分でかけそうだしいっか」
お面を頭に付けて、あたしの手にはたこ焼きと青いヨーヨー。総悟の手にはイカ焼きと焼きそばと射的の景品。
あたしの左手は総悟の右手と繋がったまま、お祭りの余韻に浸りながら屯所への道を歩いた。