沖田双子妹
□たまには年相応に
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「行ってきまーす」
今日は久々の非番。
期限付きの書類を寝る間も惜しんで終わらして、やっとのことで丸一日分非番をもぎ取った。久々の私服に着替えて総悟の気の抜けた「行ってらー」を背に、待ち合わせ場所へ向かった。
待ち合わせは最近できたカフェの前。すでに待っていた彼女を視界に捉え、ゆっくりだったペースを慌てて速めた。
「待たせてごめん!」
「まだ時間前だから大丈夫よ。それより久しぶりね、なまえ」
優しく笑って迎えてくれたのは、親友の妙。お互い仕事があってなかなか会えないけど、非番を合わせて今日みたいに丸一日会ったりしてる。
妙と一緒にカフェへ入って、案内されたのは日陰で守られたテラス席。ここはカフェ内に作られた庭とそこが見渡せるテラス席が人気で、前から行こうねと話していた店だった。
今日やっと来ることができて、あたしも妙も笑顔が溢れる。
「何飲む?」
「うーん、カフェラテにしようかしら」
「あたしはキャラメルフラペチーノにしよっと」
メニューにはこのカフェおすすめのデザートが載っていて、どれも美味しそうだった。
その中からあたしはチーズケーキ、妙はフルーツタルトを選んで注文する。
「最近どう?仕事は忙しい?」
暫くして来た飲み物で喉を潤しながら、ケーキを美味しそうに食べていた妙へと聞く。
「松平さんも最近は来てないから、比較的穏やかね。まあゴリラが動物園から脱走してくるからその対処に困ってるくらいかしら」
にっこりといい笑顔の妙に、あははと苦笑いしか返せなかった。いさ兄ホント懲りないなあ。
私よりも、と妙が少し眉を顰めてあたしを見る。
「なまえはどうなの?怪我とかしてない?」
「怪我はー、まあぼちぼちかな」
「……気を付けてね」
「ん、ありがと」
心配だと言う目を向けてくれる妙に、大丈夫だよと安心させるように笑った。最初の頃は怪我をする度に真っ青になって怒られたし、内勤にしなさいって何度も言われたっけ。
けれど今はあたしが真選組という男だらけの中で刀を振ることを理解をしてくれて、心配しながらも応援してくれる。
「そうそう。昨日のドラマ見た?」
「見たわよ。あそこの追いかけるシーンはハラハラしたわ!」
「分かるー!終わり方もいいとこで切れたしね!」
仕事の近況はそのくらいにして、ここからは平和な楽しい話。
ドラマやファッション、仕事であった面白い話とか、途中でまた飲み物を頼んで話し続けた。
テラスに差し込む光が橙になった頃、ピピピとあたしの携帯が鳴る。
「電話?」
「んーん、メール。……うわ」
「仕事ね?」
「うん…ごめんね妙。今日は夕飯も食べるはずだったのに」
「仕事なら仕方ないわ。次の楽しみに取っておきましょう」
「本当にごめん!必ず非番作るから、また連絡するね」
「ええ、私もまた連絡するわ。気を付けてね」
お会計をして、カフェの前で妙と別れる。次こそは邪魔されない!と意気込んで目的地へと走った。
メールの送信者は、松平片栗粉。